サブリース(マスターリース)契約の解約は容易ではありません(オーナー様向け)

 収益用不動産(賃貸アパート、賃貸マンション)を購入する際に、サブリース(マスターリース)契約を締結される方が多くいらっしゃいます。

 空室時でも家賃の入金が保証されることから事業用ローンの審査が緩めになり、リフォーム工事、入居者募集、入居審査、建物管理、個々の入居者が支払う家賃の入金確認に関する手間が省けるメリットがあります。特に、賃貸住宅の運営を副業として行いたいとお考えの方が、サブリース事業者による一括借り上げを提案された際に締結されます。

 満室時、空室時のいずれにおいてもサブリース事業者がオーナー様に支払う賃料はそのエリアにおける賃料相場の約8割です。それでも家賃の入金が保証され、手間が省けることから、サブリース事業者による一括借り上げを選択し、サブリース(マスターリース)契約をする方が多くいらっしゃいます。

サブリース契約の盲点
 サブリース事業者の中にはリフォーム業者を指定していることがあります。指定された工事業者が請求する工事代金が一般的な相場の2倍を超えていたことから他のリフォーム業者に工事を発注したら、多額の違約金を請求されたという事案があります。

 さらに、賃貸住宅の運営をサブリース事業者に任せてから3~4年程度経過した時点で、借地借家法が定める内容に従い、社会状況の変化等の理由により家賃相場が値下がりしている等の理由を付けて家賃の大幅減額を要求されることがあります。

 「減額請求を認めない」として、オーナー様の方からサブリース契約を解約する場合は多額の違約金を支払う必要があります。サブリース契約(マスターリース)契約は実質的に賃貸借契約(ほとんどの場合に普通賃貸借契約)であることから、借地借家法により借主であるサブリース事業者が保護されるからです。

 そして減額請求を認めたことから賃貸住宅の運営が赤字になり、自己破産に追い込まれたという事案が数多くあります。

 これらの悲劇が生じる主な原因は、サブリース(マスターリース)契約を締結する際に、オーナーが一方的に不利になる契約条項があること、および契約時における一括借り上げの賃料が相場よりも高額であることに気付かなかったことにあります。

 しかし、前述したとおり、サブリース(マスターリース)契約は賃貸借契約です。借地借家法により借主であるサブリース事業者は保護され、オーナー様による一方的な解約は認められません。

 オーナー様がサブリース(マスターリース)契約を解約できるのは、サブリース事業者およびオーナー様との信頼関係が破壊された場合、具体的には一括借り上げの賃料を3か月以上滞納した場合等、極めて限られています。サブリース(マスターリース)契約を締結する際は内容を十分に確認し、不利益になる特約条項がある場合は削除を求めることが必要です。

もう一つの盲点
 何らかの理由により、賃貸物件を売却したくなることがあります。この場合、サブリース(マスターリース)契約が締結されていると、物件の価格が低く査定されることから問題になります。

 収益用不動産の価格は、利回りで決まります。満室時、空室時のいずれにおいてもサブリース事業者がオーナー様に支払う賃料はそのエリアにおける賃料相場の約8割なので、付近にある同グレードの賃貸物件における価格の8割程度でしか売却出来ません。

 このため、サブリース(マスターリース)契約を解約したいとして相談を受けることがありますが、サブリース(マスターリース)契約は賃貸借契約であることから、借地借家法により借主であるサブリース事業者は保護され、オーナー様による無条件の解約は認められません。どうしても解約したい場合は違約金、またはサブリース(マスターリース)契約書に記載されている金額の金銭の支払いが必要になります。

 収益用不動産を将来的に売却することを考える場合は、サブリース(マスターリース)契約を締結するべきではありません。サブリース(マスターリース)契約を定期賃貸借契約にすれば、契約期間の満了によりサブリース事業者を外すことができます。しかし、サブリース(マスターリース)契約を定期賃貸借契約にて締結することを承諾する事業者は、ほとんど存在しないのが実情です。