サブリース(マスターリース)契約締結時に注意するべき内容

 昨日の投稿では、サブリース(マスターリース)契約を締結すると、解約が容易ではない上に売却価格が低くなる旨を書きました。

 サブリース契約の利点は、賃貸住宅経営におけるオーナー様の手間を大きく省けることです。賃貸住宅の運営を副業として行いたい方においてはとても便利なものであり、主に行っている仕事が忙しい方においてはサブリース(マスターリース)契約を締結しかないとお考えの方が多くいらっしゃいます。

 そこで、今日はサブリース(マスターリース)契約を締結し、サブリース事業者の手を借りて賃貸住宅の運営を行う場合における注意点、特に契約の内容に関する注意点について書きます。

オーナー様が一方的に不利になる特約がないか
 入居者退去後における室内リフォーム、大規模修繕、湯沸かし器やエアコンなどの故障修理をサブリース事業者が指定する工事業者に発注することをオーナー様に義務づけ、指定された工事業者以外の工事業者に発注した場合は、オーナー様は高額な違約金を支払わなければならない旨が記載されていることがあります。もちろん、工事費は全額オーナー様の負担です。

 指定業者の行う工事費は一般的な価格の2倍以上であることがよくあります。差額の多くは、サブリース事業者にバックマージンとして支払われます。

 また、「外壁塗装などの大規模修繕を5年毎に必ず実施する」、「室内の湯沸かし器、キッチンユニット、水洗トイレについては3年毎に必ず機器を交換しなければならない」、「工事または設備の更新費用は全額オーナー負担になる」などが記載されていることがあります。大規模修繕を5年毎に行うとか、室内設備を3年毎に交換する内容の契約は、明らかに異常です。

サブリース事業者がオーナー様に支払う家賃の金額が適正か
 サブリース物件において、オーナー様に支払われる賃料は家賃相場の8割程度であるのが通常です。しかし、サブリース契約の締結を誘引する目的で、付近の家賃相場を無視した高額な賃料(全室が満室になった際に得られる家賃と同じ金額)を支払うことを約束する業者があります。

 このような業者は、契約更新の際に家賃の大幅な値下げを必ず要求してきます。サブリース業者は、家賃の値下げ請求は合法であり、借地借家法には反しない旨を主張します。

 しかし、この家賃の値下げが原因で事業用ローンを返済できなくなる原因になることがあります。特に事業用ローンの利率が高い場合に問題になります。最悪の場合、任意売却または裁判所が実施する不動産競売により売却しなければならず、売却後も多額の借金が残ることがあります。

 全室が満室である場合に得られる家賃の8割を超える金額の支払が約束されている場合は要注意です。

オーナー様がサブリース契約を解約する際に支払う違約金の金額が適正か
 オーナー様がサブリース契約を解約する際には、違約金を支払わなければなりません。サブリース(マスターリース)契約の実質は普通賃貸借契約であり、サブリース事業者は借地借家法により保護されます。一般的な常識の範囲に納まる金額であれば、違約金を支払うことはやむを得ません。

 しかし、契約書における特約に、サブリース(マスターリース)契約をオーナー側から解約する際の違約金を極めて高額に設定していることがあります。部屋数20室の賃貸アパートの場合でも、違約金の金額が1千万円以上に設定されていることがあります。

まとめ
 サブリース(マスターリース)契約書の案を提示されたら、その場で署名捺印するのではなく内容をよく確認する必要があります。質の良くない事業者の場合、その場での署名および捺印をしつこく求めるので、その場で署名および捺印をしてしまい、後で後悔することがあります。

 契約締結日の前に契約書の案を送付してもらい、各条項をもれなく確認することが必要です。