困った相談(その34、賃借人の連帯保証人が破産宣告を受けた)

 1棟マンションのオーナー様からの相談です。その内容は「賃貸マンションの一室を借りている入居者の連帯保証人が破産宣告を受けた。賃貸借契約はどのようになるのか。入居者を退去させることは必要か。」というものです。

 令和2年4月に改正民法が施行されました。このため、賃貸保証会社と入居希望者との間に家賃保証契約が締結されることを入居の条件とする賃貸物件が大半になりました。それ以前に賃貸借契約が締結された物件では家賃保証契約を締結することなく連帯保証人を立ててもらうことにより入居を許可している物件が多くあります。

 東京都内にある住宅の多くは契約期間を2年に設定しています。令和4年4月以降に合意更新を迎える物件では賃貸保証会社と賃借人との間で(家賃)保証契約を締結してもらい、以後は連帯保証人を不要とする物件が増えています。

 しかし、賃貸借契約の締結が令和2年3月以前であり、更新を「自動更新」としている物件では令和4年4月以降も連帯保証契約が継続しています。

 ご承知の通り、コロナ禍が長期化していることから飲食店や物販店の多くが苦境に陥っています。このため、賃貸物件の連帯保証人が破産宣告を受けることがあります。この場合、連帯保証契約はどのような扱いを受けるかが問題になります。

民法第450条

(保証人の要件)
第四百五十条 債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
一 行為能力者であること。
二 弁済をする資力を有すること。
2 保証人が前項第二号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。
3 前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。

 民法第450条第1項~第3項の定めにより連帯保証人の破産が確定した場合の連帯保証契約は債権者(この場合はオーナー様)が許可しない限り無効になります。ほとんどの場合にオーナーが許可することはないのでオーナーは賃借人に対し、代わりの連帯保証人を探すことを請求できます。

 しかし、令和4年4月に施行された改正民法により、新たに連帯保証人になられる方に対し、連帯保証の極度額(連帯保証債務の実行を求められる場合における最大の金額、通常は2年分の家賃相当額)を通知しなければならなくなりました。その金額はかなり高額になることが多いので連帯保証人の引き受けを拒否されることが増えています。このため、新たな連帯保証人が見つからないことがよくあります。

  結局、賃貸保証会社と賃借人との間で(家賃)保証契約を締結してもらい、以後は連帯保証人を不要とすることを検討することになります。

賃貸保証会社と賃借人との間で(家賃)保証契約を締結できない場合

 ところが、賃借人に過去の家賃滞納歴やクレジットカード請求額の未払いなどがあると、賃貸保証会社が(家賃)保証契約の締結に応じないことがあります。この場合、代わりの連帯保証人が見つからないと、オーナーとしては家賃の滞納が発生した際に代位弁済を受けることができなくなります。

 残念ながら、この場合におけるオーナー様に対する救済策は何も用意されていないのが実情です。連帯保証人を用意できず、家賃保証契約を締結できないのであればオーナー様は賃貸借契約を解約したくなると思います。しかし、入居を許可し、家賃の支払いがキチンと行われているのであれば賃貸借契約は有効であり、オーナー側からの解約は認められません。連帯保証人が破産しても借地借家法が規定する「賃貸人、賃借人相互の間の信頼関係が破壊された」とは言えないからです。

 オーナー様におかれては酷ですが、現行法の規定に従うと連帯保証人が存在せず、かつ保証契約が締結されていない状態にもかかわらず退去を求めることは許されず、物件を貸し続けるしかありません。オーナー様は「連帯保証人になってくれそうな方が現れたらすぐに連絡して欲しい」と賃借人にお願いすることしかできないと思われます。