家賃保証会社の利用が必須であれば、新たな法規制が必要

2020年4月に改正民法が施行されたことにより、賃貸物件の大半において家賃保証会社の利用を必須としています。民法が改正される前は、賃借人が家賃保証会社と保証契約を締結する必要は無く、連帯保証人を引き受けてくれる方に引き受けをお願いすることで足りていました。しかし、民法が改正されたことから、賃貸物件を借りる際には原則として家賃保証会社の利用が前提になりました。

以前から家賃保証会社による強引な取り立てが問題になっています。夜討ち朝駆けで訪問し、隣近所に聞こえるレベルの大声で「家賃を払え!」などと怒鳴り上げるのは当たり前で、勤務先や親族に電話して「○○さんは家賃を支払っていないので、支払うように言ってください。」と告げる、錠前を交換して部屋に入れないようにする、家財道具を運び出して捨ててしまう、数名で押しかけて暴力を振るう等、かなり悪質な取り立てが行われてきました。

このため、2010年に家賃保証会社や管理会社による家賃取立行為を規制する法案が当時の民主党政権から提出されました。サラ金と同様の規制が必要ということで法案が提出されたのですが、この法案には、「家賃の督促は必ず書面で行わなければならず、訪問や電話による督促は禁止事項とする」という、不動産会社としては絶対に納得できない訳のわからない条文がありました。その他にも問題になる条項があったことから不動産関連団体が猛反対し、この法案は廃案になりました。

家賃の支払い方法を銀行振込にしている場合、忙しいとうっかり忘れてしまう賃借人がいます。このような場合、物件の管理を受託している不動産会社または管理会社から賃借人に「家賃の振込をよろしくお願いします」という電話をかければ、多くの場合、1~2日後には家賃が振り込まれます。不動産賃貸や管理を生業としている不動産業者であれば、このことは必ず経験しています。

しかし、2010年に民主党から提出された法案では、このような場合でも必ず書面で督促しなければならないことを定める文言が盛り込まれていました。電話をかける行為は「威迫」につながるというのです。

家賃の支払を督促する書類を郵送しても、賃借人はダイレクトメールと勘違いして捨ててしまうことがあります。すると家賃の支払いを忘れたまま放置されることになり、オーナーが困ります。

家賃の支払いをうっかり忘れる賃借人はかなり多いです。賃借人に電話を一本かけることにより、ほとんどの方は支払に応じるという現場の状況、および不動産会社の実務を全く考慮しない、このような不見識かつ無知をさらけ出した内容の法案が何故提出されたのか、とても不思議です。

この法案は廃案になりましたが、家賃保証会社を直接規制する法律が何も成立していないため、暴力行為を除き、やりたい放題に近いのが現状です。家賃保証会社の業界団体では取り立てに関するガイドラインを定めていますが、家賃保証会社の取り立て担当者の中にはこれを守らない者がいます。

例えば、部屋の錠前を交換し、家財を運び出して捨ててしまう輩がいます。このような被害を受けた場合、警察に被害届(住居侵入、窃盗)を提出し、民事裁判を提起して損害賠償を請求するしかありません。

家賃を支払えない方は裁判を提起する資力が無いことがほとんどです。警察に訴えても、「住居侵入行為や家財が搬出された証拠がない」とか、「家賃を払わない貴方が悪い」と一方的に言われ、被害届を受け付けてくれないことがあるようです。被害届の提出を弁護士に依頼したくても、弁護士に支払う報酬を捻出できないことから泣き寝入りするしかありません。暴力行為を受けたことから負傷した等の事案でなければ、相手にして貰えないことがあるようです。

私見ですが、2010年の法案は、借地借家法で守られている(というか、守られすぎている)賃借人の権利を更に強めるものでした。悪質な滞納を助長することに繋がる法案であり、とても受け入れることはできません。

しかし、住居侵入や窃盗といえる行為を規制できない状況であるのは困ります。改正民法が施行され、家賃保証会社の利用が前提になったのであれば、家賃保証会社の行為として正当化される行為、および禁止される行為を整理する必要があります。

家賃保証会社による家賃の取り立て方法として、社会的に認められないと思えるものは規制する必要があります。サラ金の取り立てについては規制法があります。これに準じた法案を早急に作成する必要があると考えます。なお、賃借人または賃貸人の権利が過度に強められないようにするのが必要であることは、言うまでもありません。

特に現在はコロナ禍であることから失業する方が急増しています。改正民法を施行して家賃保証会社の利用を事実上必須としているにもかかわらず、家賃保証会社を直接規制する法律を何も設けないのであれば、今後はホームレスが激増します。

ホームレスとは住所不定者ですから、就職活動をしても雇用されることはまずありません。増え続けると、強盗などの犯罪に走る者が出てきます。家賃保証会社を直接規制する法律を何も設けないことは極めて危険であり、必ず大きな社会問題になると思います。