不動産の問題、事後では解決不能であるものが多い(その2)

※前回投稿した内容の続きです。相談者のプライバシーに考慮し、さらに事案を理解しやすくするために相談内容を多少アレンジしています。

解決不能、またはほぼ不可能な相談事案について紹介します。

相談4

 8年前に収益用不動産を購入する際に、不動産会社よりサブリース契約の締結を強く勧められました。空室の有無にかかわらず決められた賃料が支払われ、手間がかからず、金融機関の心証が良くなると説明されました。
 ところが最近になり、賃料の大幅値下げと全ての貸室内にあるエアコンや給湯器、浴槽等の新品交換を要求されました。契約書には「故障の有無にかかわらず8年毎に、交換工事をサブリース事業者指定の業者に発注する。」と記載されています。この内容には気がつきませんでした
 要求に従うとマイナス収支になり、事業用ローンの返済が出来なくなります。サブリース契約の解約には多額の違約金が必要です。どうしたらよいでしょうか。

 残念ながら、収益用不動産のオーナー様は「事業者」であり、「消費者」ではありません。借地借家法は、借主を強く保護しています。このため、サブリース事業者も「法律により守られる側」とされています。
 相談者は賃貸借契約書に「事業者」として署名及び捺印をしました。公序良俗違反がある、または法律行為の要素に錯誤がある場合でなければ契約内容の履行を求められます。
 相談者が「サブリース契約の内容を知らなかった。」と主張しても「事業者であるのに契約書をよく読まない方が悪い。」と退けられると思われます。
 相談者が契約内容を履行しないことについてサブリース事業者が納得しない場合は裁判になることがあります。しかし、公序良俗違反がある、または法律行為の要素に錯誤があることの立証責任は相談者にあります。これらの挙証はかなり困難です。

 最も大きな問題は、サブリース契約の解約が極めて難しいことです。サブリース契約の解約に必要な違約金は、1棟もののマンションの場合で1千万円を超えることがよくあります。建物の規模や賃料により数千万円に達することがあります。
 サブリース契約を安易に締結することは避けるべきです。

相談5

 約10年前、不動産投資業を営む友人の勧めで再建築不可の土地上に建つ古い収益用戸建住宅を購入しました。土地の形状はいわゆる旗竿地であり、竿部分の通路幅は最大で1.5mしかありません。2mに満たないので再建築不可です。
 ところが最近、隣の建物で火災が発生し、もらい火により私の建物が全焼しました。幸い、入居者は外出中であり、怪我はありませんでした。火事の原因は漏電とのことです。

①隣家の所有者に損害賠償を請求したいと考えていますが、可能でしょうか。
②建物の再建築は絶対に認められないのでしょうか。


①の損害賠償請求は、失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法)により認められない可能性が高いです。故意または重過失がない状況で発生した火災により焼失した場合、損害賠償責任は免責されます。

②法理論上は通路部分を拡幅することにより再建築が認められます。しかし、通路部分に接する隣地の所有者が土地の譲渡を認め、通路部分を拡幅できることはほとんどないと思われます。
 隣の建物が通路部分より離れている等、安全面における問題がなければ建築審査会の審査により再建築が認められます。しかし、東京などの大都市では境界の近くに建物があることが多いので、再建築が認められることは極めて稀です。

 再建築不可の建物は安価ですが、潜在的に大きなリスクがあります。建物が焼失したら、多大な損害が発生するので筆者は購入をお勧めしません。リスクを許容できないのであれば、購入しないことをお勧めします。