収益用不動産の購入後に管理会社の変更を行うことは可能か

 収益用不動産を購入された方から「管理会社を変えたいが、可能か」との質問を受けることがあります。変えたい理由の多くは「他に所有している収益用不動産の管理を委託している管理会社に委託したい」、「管理会社に支払う管理委託料を削減したい」、「入居者への対応に不手際が多く、クレームがオーナーに直接届くのでたまらない」というものです。

 いずれの場合でも、業務委託契約では契約期間が定められているので、管理会社から契約期間が満了するまで管理を継続したいと要望されることが多いです。そして管理会社を変更する際は、契約期間満了までの管理委託料を上限とした金額を請求する管理会社があります。

 なお、 管理会社を変更したいと考える理由が「管理を激安で請け負う管理会社があるので管理会社を変更したい」 というものであれば、その妥当性について検証する必要があります。

管理委託料を削減したいという理由で管理会社を変更することの是非

 管理会社の変更が適切かは、前所有者が管理会社と締結していた業務委託契約の内容により判断されます。なお、業務の委託内容により管理会社の変更が妥当ではない場合があります。

 管理委託料を極めて安く設定している管理会社(不動産会社)がありますが、空室が生じた場合における入居者募集に際し締結する媒介契約を専任媒介契約、または専属専任媒介契約とすることを条件としているのが通常です。

 また、管理委託料が極端に安い管理会社は見回りをほとんど行わない、入居者からのクレームにほとんど対応しない等、管理の質が良くないことがよくあるのが実情です。現在利用している管理会社による管理の質が良くないということで筆者に相談される方がいらっしゃいますが、所詮は「安かろう悪かろう」かもしれません。管理の質が良くないのであれば管理会社を変えるしかありませんが、管理委託料はアップします。

 私の会社がある東京都目黒区における管理委託料の相場は家賃等の出納管理のみを委託する場合で家賃の3~4%、見回りや各種点検時の立ち会い、入居者からのクレーム対応、設備の修理が必要な場合における修理業者の選定と立ち会い等を含む場合で6~7%といったところではないかと思います。これを「1~2%前後で請け負います」とする管理会社がありますが、どう考えても原価割れであり、満足な対応は期待できません。  

 激安と言える管理委託料を設定している理由は、空室発生時における入居者募集を専任媒介契約、または専属専任媒介契約で請け負いたいからです。

サブリース契約に基づく管理が行われている物件では、管理会社の変更は困難

 サブリース契約は、実質的には一種の賃貸借契約です。サブリース会社は収益用不動産を一括して借り上げ、物件内における空室の有無にかかわらず一定の賃料を支払う契約となっています。そして物件の管理はサブリース会社が一切を請け負うとされていることが大半です。

 通常、サブリース契約は定期賃貸借契約ではなく、普通賃貸借契約として締結されます。従って、契約書に記載されている契約期間が到来しても、オーナーから解約を申し出るには借地借家法が定める正当な理由、すなわち「賃貸人および賃借人相互の信頼関係を破壊したと認められる場合」でなければ解約を求めることはできないとされています。

 それでも解約を求めるのであれば、かなり高額な違約金を支払う必要があります。違約金の金額は、10室程度の1棟アパートの場合で1千万円を超えることがよくあります。

 サブリース契約に基づき一括借り上げをされている収益用不動産において、管理会社を変更することは極めて困難であると言えます。