家賃保証会社の追い出し条項無効の最高裁判決、入居審査に影響するか

 令和4年12月13日に投稿したとおり、家賃保証会社が定めた「追い出し条項」は無効であるとの最高裁判決が確定しました。詳細についてはこちらのページ(過去記事)を参照願います。

 問題となったのは以下の4要件を満たせば賃貸借契約は自動的に解約したとみなし、貸室内の家財を搬出することができるとする条項です。

1.家賃を2カ月以上滞納
2.連絡が取れない
3.建物を相当期間利用していない
4.建物を再び使わない意思が客観的に見て取れる

 現在、家賃保証会社が家賃を滞納している賃借人に対し、いわゆる「夜逃げ」を勧める事案が相当数あります。

 上記の追い出し条項が合法とされると、賃借人が自発的に行方をくらました際に賃貸借契約が自動的に解約されます。この場合に賃借人は「住所」を失いますので無職の場合に再就職することが極めて難しくなります。その結果、賃借人はホームレスになることが避けられないので社会不安の増大を煽ることになります。

一部の著名人などが最高裁判決に異議、しかし...

 この最高裁判決に対し、一部の著名人やインフルエンサーなどが「入居審査が厳しくなり、どこにも入居出来ない人が増える」として反対しています。入居審査は本当に厳しくなるのでしょうか。

 筆者の個人的な見解になりますが。私は「入居審査が厳しくなることはなく、今までと同じ基準で判断される」と考えています。

 家賃保証会社の入居審査では過去の家賃滞納歴、クレジットカードや各種ローンの滞納歴、勤務先、職業、勤務年数、収入等を審査します。滞納歴がある、家賃と比較して収入が少ない、勤務実態がない等の場合は審査NGになりますが、問題になるポイントはこれらのみです。

 また、コロナ禍の中では入居審査を通過しても勤務先の倒産や廃業による家賃滞納が増えています。倒産や廃業する企業名を事前に知ることはできないので、入居審査を厳しくしても家賃滞納者は減りません。審査基準を厳格化しても意味をなしません。

 よって、入居審査では今までと同じ基準が適用されると考えています。

家賃を滞納する賃借人は、裁判手続きで退去させる

 今回の最高裁判決は、家賃を滞納している賃借人を退去させる際には明け渡し請求訴訟の提起が必要であることを判示しました。退去させるためには明け渡し請求訴訟を提起して判決を得た上で、強制執行にかけることが必要です。

 家賃保証会社は裁判期間中の家賃を代位弁済しなければなりません。裁判費用をバックアップするプランを設けている家賃保証会社が多くありますが、この場合は裁判費用も支出する必要があります。

 今回の最高裁判決により、家賃保証会社の負担が増大します。「夜逃げ」を勧め、夜逃げしても「退去した」とは認められないことから裁判手続きを行う必要が生じ、更にオーナー様に家賃の代位弁済をしなければならないということで、莫大な金銭的負担を強いられることになります。

 今後は、廃業する家賃保証会社が増える恐れがあります。