収益用不動産の購入後に確認するべき点(その1、損害保険)

 賃貸アパート、1棟ものの賃貸マンションなどを購入した際に、忘れてはいけないのが損害保険です。損害保険には新しくオーナーになられた方が加入するべき保険と、賃借人において加入するべき保険とがあります。

新しい所有者(オーナー様)が加入しておくべき損害保険について

 前所有者は売買契約の決済日において保険を解約しているのが通常です。このため、決済日より前に損害保険会社と打ち合わせて損害保険に加入しておく必要があります。

 オーナー様がなぜ損害保険に加入しなければならないかについてですが、建物の共用部において漏電したことによる火災の発生、水道管の破裂による浸水、台風または竜巻などによる屋根・外壁の剥がれ、近隣の家屋から出火したことによる類焼等に備える必要があるからです。

 賃借人が個別に加入している損害保険では、上述の被害が発生しても原則として保険金を受け取れません。また、階段の手すりが壊れたことから入居者が転落して怪我をした、外壁が剥がれ落ちて入居者に当たり怪我をした等の事案に備えるため、施設所有者賠償責任保険(または施設管理者賠償責任保険、保険会社により名称は異なります)に加入しておく必要があります。

入居者(賃借人)が加入しておくべき保険

 入居開始時に損害保険への加入を義務づけている物件が大半なので、賃借人が入居を開始する時点では何らかの損害保険に加入していると思われます。

 この保険の趣旨は、賃貸借契約の終了時にお部屋をオーナー様にお返しすること、および失火や設備の故障等が原因で賃借人・第三者の所有物に損害が発生した場合にその損害を補填することにあります。例えば失火によりボヤを発生させてしまった場合、入居者がお部屋の水道栓を開放したまま外出したことから当該入居者の部屋と階下の部屋の両方が水浸しになり物的損害が発生した等の場合に保険金が支払われます。

 注意が必要なのは、損害保険契約がきちんと更新されているか否かです。入居者(賃借人)の中には賃貸借契約の更新については意識しているものの、損害保険に対してはそれ程注意を払わない方がいます。保険期間が満期を迎えているのに損害保険を更新していない入居者が散見されますので注意が必要です。

 更新を行わずに放置することを防止するためには賃貸借契約書の特約の中に損害保険の加入を義務づける条項を入れることが有効です。そして損害保険の更新日と賃貸借契約の更新日とをなるべく近づけることにより、賃貸借契約を更新する際に損害保険の更新が行われているかを確認することをお勧めします。

 なお、保険会社および保険の種類をオーナー様や管理会社が指定することは保険業法に違反する行為なので、賃貸借契約書に特約を設ける際にはこの点には注意が必要です。