収益用不動産の購入後に確認するべき点(その2、レントロール)

 収益用不動産(賃貸用アパート、1棟マンション等)の購入後、全ての賃借人にオーナー変更のお知らせと家賃の支払い方法をご案内します。ところが家賃の入金額がレントロール記載の金額より少ないことがたまにあります。

 その原因ですが、レントロールの作成後に前所有者が家賃の減額を承諾したにもかかわらず、これがレントロールに反映されていないたことが考えられます。

 新型コロナウイルス感染症がなかなか終息しないことから勤務先を解雇された、または賃金カットを受けた方が非常に多くなっています。このため、賃借人がオーナー様に対し一時的に家賃を減額して欲しい旨を懇願した場合、家賃の一時的な減額を認めることが多い状況です。

 オーナー様が特定の入居者に対し家賃の一時減額をした旨を不動産会社に伝えることを忘れることがあります。この状況で収益用不動産が売却された際に、想定していた家賃が入金しない事態が発生します。

 この場合は前所有者および入居者に対し、家賃の減額期間を確認する必要があります。その際は、覚書などが交わされていることが多いので参考にすることをお勧めします。

 前所有者が家賃の減額を認めている以上、所有者が変わったからといって家賃の減額を停止して直ちに元の金額に戻すことは困難です。オーナーが変更しても賃貸借契約は継続し、この賃貸借契約に付随する覚書や契約条件の一時的な変更措置による効果も引き続き継続(不動産競売で売却された場合は継続しないことがあります)しますので仕方ありません。

 家賃を強引に元の金額に戻せば家賃滞納に陥る恐れがあります。家賃滞納を理由とした退去を求め、賃借人が退去したとしても次の入居者が直ぐに決まる保証はなく空室期間が長期になる恐れがあります。コロナ禍のために住み替えに対する需要が激減しているからです。

 減額された金額であるとしても家賃が必ず入金されるのであれば、家賃の減額期間が満了するまでは減額を甘受するというのも一つの考え方としてあると思います。その代わり、コロナ禍が終息した際には本来の家賃に戻すことが肝要です。

 なお、家賃の減額を認めた入居者が相当数いるにもかかわらず、意図的にそのことを隠し、レントロールに反映させずに売却したと考えられる場合は前所有者および仲介した不動産会社に対し民事訴訟を提起し、損害賠償を請求することが考えられます。