賃貸物件の錠前を勝手に交換された場合

 賃借人の中にはオーナー様や管理会社と相談することなく、貸室の錠前を勝手に交換する方がいらっしゃいます。このような場合、オーナー様はどのように対応するべきかについて述べます。

 ご承知の通り、賃貸物件を借りる際には扉の合鍵の一本をオーナー様または管理会社に預けるのが通常です。合鍵は、貸室内で異常事態が発生した際に必要になります。

 異常事態としてよくあるのは水漏れです。「扉の下から大量の水が流れ出ている」という通報、階下の入居者から「雨漏りがする」というクレーム等から発覚することが多いです。このような場合は合鍵を使用して室内に立ち入り、水道栓の故障であれば緊急に修理することになります。

 火災報知器が鳴った、ガスの臭いがする等の場合も室内に立ち入ることが必要になります。このような場合に誰も入室できないと、他の入居者が死傷する事態が生じる恐れがあります。

 ところが、賃借人の中には「理由が何であれ、室内には立ち入らないで欲しい」とお考えになるのか、錠前を丸ごと交換し、合鍵を誰にも預けない方がいらっしゃいます。賃貸借契約を締結する前に行われる重要事項説明の際に、錠前の無断交換は禁止事項であることを説明しても無視して勝手に交換する方がいらっしゃいます。そして合鍵が預けられていなかったことから解錠できず、被害が拡大した事案が数多くあります。

賃貸借契約書に特約を設ける

 対策としては貸室の錠前を無断で交換することを禁止し、オーナー様又は管理会社の許可を得て交換した場合は合鍵を預けなければならない旨の条項または特約を賃貸借契約書に記載することをお勧めします。

 また、緊急事態が発生した際にはオーナー様または管理会社の社員が入室して対応する事がある旨を重要事項説明の際に説明しておくことが重要です。

特約を設けたにもかかわらず勝手に錠前を交換された場合

 錠前の無断交換禁止を賃貸借契約の契約条項または特約に記載していたにもかかわらず、オーナー様または管理会社に無断で錠前を交換する行為は、借地借家法が定める「賃貸人および賃借人における相互の信頼関係が破壊された場合」であると言えます。オーナー様は賃貸借契約を解約し、退去を要求して構いません。

 また、錠前の交換に際し、オーナー様が貸与した錠前を捨てた場合は「原状回復が不可能」と言えるので損害賠償を請求する、または敷金から損害額を差し引いて構いません。