都心の単身者向け収益用区分マンションを購入して財産を失う方が増加

2022年9月27日

 「老後には2,000万円が必要」というフレーズが一人歩きしたことから、「何かに投資して運用しなければならない」という風潮が巷にあふれかえっています。

 書店に行くと収益用不動産や不動産投資に関する本が数多く売られています。このためか、多くの方が検討するのは賃貸不動産の運営です。「何もしなくても定額の家賃収入を得られる」と期待し、単身者用区分マンションであれば都心の物件でも1,000万円未満で購入できるものが多いことから、主にサラリーマンや自営業者の方が購入しています。

コロナ禍であることから単身者向けの収益用マンションは、安く購入できても危険

 単身者用区分マンションの場合、空室であっても管理費および修繕積立金が毎月発生します。物件により、これらの合計が想定家賃の2割以上になることがあります。入居者が退去して空室になった場合は、自分の手取り収入から支出しなければなりません。エアコンや湯沸かし器等の設備が故障した場合は修繕費が発生します。さらに固定資産税および都市計画税(都市計画区域内の物件)を毎年支払う必要があります。

 入居者が退去して空室になった場合はリフォームおよびハウスクリーニングを行う必要があります。故意または過失による損耗は入居していた方に請求できますが、クロスの日焼けなどは自然損耗であることからオーナーの費用負担により修繕することになります。

 さらに現在はコロナ禍が継続中であり、景況感が悪化していることから入居者が勤め先を解雇され、家賃を滞納することがあります。オーナー様から賃貸借契約の解約を通告しても引っ越し先が見つからないことを理由として、何か月も居座る方がいます。このような場合には裁判を提起し、最終的には裁判所が実施する強制執行により退去させなければならないことがあり、数十万円~100万円以上の費用が発生し、退去して次の入居者が決まるまでの間における家賃収入を全く得られないことがあります。

 賃貸不動産の運営を始める方の多くは、「最初は区分マンションの一室を購入し、順調に運用できるようであれば区分マンションを少しずつ追加で購入すれば良い。」と考えるようです。しかし、入居者の退去や家賃滞納が発生するとたちまち資金が不足します。

 複数の物件を保有していれば他の部屋から得られる家賃収入でカバーできるのですが、保有する物件が区分マンション1室のみである場合、退去や滞納が発生すると全ての家賃収入を得られなくなるからです。

 さらに事業用ローンを利用して購入した場合は、物件購入費用および利息を毎月返済しなければなりません。 事業用ローンの返済が滞ると物件が差押えられ、最終的には抵当権または根抵当権が実行されます。任意売却で安く売却するか、裁判所が実施する不動産競売により安値で売却されることになります。

 ほとんどの場合に「任意売却または競売で物件を売却すれば終わり」とはなりません。必ずと言って良いほどに借金が残ります。この借金は、年月をかけて毎月返済していく必要があります。返済できない程に多額の借金が残った場合は自己破産を迫られることになります。

運営が破綻する危険を回避するためには

 単身者向けの収益用区分マンションを購入する際は手持ち資金の全額を利用して購入するのではなく、空室期間が半年~1年程度継続しても運営が破綻しない程度の資金を残して購入することをお勧めします。

 コロナ禍がなかなか終息せず、さらに景況感が悪化していることから収益用不動産、特に単身者用の区分マンションを購入する場合における事業用ローンの審査が厳しくなってきています。事業用ローンを返済できなくなる方が増えているからです。このため、可能であれば事業用ローンを利用しないで購入できる金額の物件を購入することをお勧めします。

  単身者向けの収益用区分マンションの購入は、余裕資金で行うことを強くお勧めします。「そのようなことを言っていたら物件を購入できないではないか」という声が聞こえそうですが、コロナ禍が継続している以上、無理は禁物であると思います。

 なお、収益用アパート、収益用1棟マンションを購入する際には事業用ローンを利用して購入することが一般的です。仮に1室で滞納が発生しても他室の家賃収入でカバーできることが多いので、上述した内容は必ずしもあてはまりません。想定家賃収入、レントロール、今後発生するであろう費用(大規模修繕の費用など)を詳細に検討し、購入するか否かを判断することになります。

2022年9月27日追記

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