区分マンションの個人間売買では未納金に注意

 前回の投稿では現況居住中の戸建住宅を購入する際には売主の不退去に注意する必要がある旨を述べました。この注意事項は、現況居住中の区分マンションを購入する場合にも該当します。

 本日は、分譲区分マンションを個人間売買で購入する際は未納金に注意する必要があることについて書きます。ここでいう未納金とは管理組合が毎月徴収する管理費、修繕積立金、その他です。

 区分マンションの売買に際し、不動産会社が仲介する場合は管理費および修繕積立金の納付状況を調査します。売却対象の部屋だけではなく、建物全体における積立金の合計、滞納額等を不動産仲介業者が調査します。

 売却に成功した場合、滞納されている金額の合計および遅延利息は売却代金から充当され、残額が売主に支払われます。この調整作業は主に不動産仲介会社が行います。滞納額があまりにも過大で売却代金だけではまかなえない場合は、やむを得ず取引の延期や打ち切りを勧めることがあります。

 問題は、親戚同士または友人同士等における、いわゆる個人間売買を行う際に発生します。仲介手数料を節約するために不動産会社を利用しない取引にしがちであり、しばしば問題が発生しています。

 以下の事例に示されるパターンがよくあります。

事例

 親戚から自宅として利用している区分マンションを売却したいとの申し出があり、自分が購入することにしました。不動産会社を通すと仲介手数料が発生するので、節約するために契約書を自分たちで作成し、代金を支払い、所有権移転登記を済ませました。売主から管理費および修繕積立金の未納額がないと言われたのでそれを信じていました。
 しかし、管理組合が買主である私に未納額および遅延損害金(遅延利息)の支払を求めてきました。
 未納額の内容は管理費、修繕積立金、専用駐車場利用料であり、売主は数年前から滞納していたとのことです。これに遅延利息を加えた合計は300万円を超えます。
 この金額は、買主が支払わなければならないのでしょうか。

 このような問題がよく発生するので、不動産会社を利用せずに売買契約を個人間で締結することはお勧めできません。親戚同士、または友人同士で信用していたとしても、不動産会社を通さずに個人間売買で購入すると酷い目に遭うことがあります。

 結論から述べると、買主は全額を管理組合に支払わなければなりません。このことは建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)の第7条第1項および第8条において定められています。

建物の区分所有等に関する法律

(先取特権)
第七条 区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
3 民法第三百十九条の規定は、第一項の先取特権に準用する。

(特定承継人の責任)
第八条 前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。

 区分マンションを購入する際は、管理費および修繕積立金等の滞納に注意する必要があります。不動産会社に仲介を依頼すれば、管理組合(または管理会社)に対し滞納額に関する調査を依頼してもらえます。なお、マンションにより、この調査(重要事項調査報告)は不動産会社による依頼でないと受け付けない管理組合(または管理会社)があります。

 仲介手数料を惜しんだために多額の損害を被ることがあるので、個人間売買でも不動産仲介会社の利用を強くお勧めします。