住宅ローン特約の詳細を契約書に記入しないとトラブル

 相談事例です。プライバシーに配慮し、一部アレンジしています。

事例

・相談者A氏は自宅とする目的で中古戸建住宅を購入することを決め、不動産会社と売買契約を締結しました。住宅ローンを利用するつもりであり、その旨を不動産仲介会社に告げました。利用する金融機関は勤め先の給与の振り込み先として利用している銀行です。

・不動産売買契約の当日に手付金を支払い、契約自体は無事に成立しました。その後、住宅ローンの審査を金融機関に正式に申し込みましたが、審査の結果は融資不可でした。

・ローン特約により売買契約が白紙になることを期待していましたが、売買契約書におけるローン特約の欄に利用する金融機関の名称、支店名、金額、契約の解除期限等が記入されていませんでした。このため、売主が「契約書に記載されているローン特約は無効なので、契約の白紙撤回は認められない。手付金は返さない。」と主張しています。

・さらに、不動産会社からも「売買契約は成立しているのだから、仲介手数料を請求する。」と言われました。

・手付金は戻らず、仲介手数料も支払う必要があるのでしょうか。

 売買契約書にローン特約を設けることについて、売主および買主が合意していたものの、利用する金融機関の名称や契約の解除期限などが記載されていなかったことに起因するトラブルです。

 今回の事案では売主側の不動産会社が売買契約書を作成しました。買主側の不動産会社は売買契約書を契約前にチェックしているはずです。その際に利用する金融機関の名称や契約の解除期限が記載されていないことを確認していたと思われます。

 買主側の不動産会社は「白紙委任と同じであり、ローン審査が通らなかった場合でも他の金融機関に再審査してもらえれば良い。解除期限の欄が空欄なので、ローンが否決されても何回でも他の金融機関による審査をかけられる。このままにしておこう。」と考えたのでしょう。

 一方、売主側の不動産会社は「金融機関の名称や契約の解除期限を記入しなければローン特約は存在していないのと同様に扱われるはずだ。ローンが否決されても売主は手付金をもらえるし、売主に仲介手数料を請求できる。」と考えたものと思われます。

 双方の思い込みが原因で、トラブルに発展したわけです。

 この事案では双方が話し合い、「ローン特約自体は有効。別の金融機関による審査を受けても構わないが、解除期限を設ける。」として覚書を締結することを提案させていただきました。

 幸い、売主および買主の双方が早期に売買契約を成立させることを強く希望しており、覚書の締結に同意しました。最終的には三つ目の金融機関において解除期限の直前に融資が承認され、無事に決済できたとのことです。

 売買契約書の特約としてローン特約を設ける際は金融機関の名称、支店名、融資金額、契約の解除期限が記載されているか、確認することを強くお勧めします。