収益用不動産の価値は上がる?それとも下がる?

 ご承知の通り、東京およびその近郊における収益用不動産の利回りがかなり低くなっています。中古物件でも表面利回り3~4%台の物件が数多く売り出されています。銀座などでは2%台の物件が登場しています。

 利回りが低い理由は、需要が旺盛であるからです。都内城南エリアで1棟マンションを購入する場合、コロナ禍の前は2億円程度で購入できる物件が数多くありました。しかし、当時2億円のグレードの物件は、現在は3~5億円程度に値上がりしました。

 コロナ禍になる前は、表面利回りが6~9%程度の物件が数多くありました。しかし、現在は表面利回り3~4%の物件が大半です。収益用不動産の取引価額はコロナ禍になる前の約2倍になりました。

 あくまでも私見ですが、事業用ローンを利用する場合は表面利回り6%超でないと黒字での運営は難しいと考えています。なお、この利率はエリアおよび物件の規模、部屋数、築年数、構造等により多少異なります。

 表面利回り3~4%程度しか得られない物件は、どのようにやりくりしてもマイナス収支になることが多いです。空室が発生すれば賃料収入を得られなくなり、次の入居者を募集するための費用が発生します。税金および保険料、大規模修繕費用の積立て、貸室内の設備故障に対する修繕費、物件の維持および管理の費用が必要になります。

 さらに収益用区分マンションでは管理費および修繕積立金を毎月支払う必要があります。管理組合が機能していない物件では他室の滞納分に対する督促が行われていないことがよくあります。このような物件では管理費や修繕積立金が異様に高額であることがあります。家賃収入の4分の1~3分の1に達する物件があり、このような物件を購入すると途端に大赤字になります。

東京およびその近郊の収益用不動産における価額は現在がピーク?

 今後は、どのようにやりくりしてもマイナス収支になる物件が増えると思います。現在、都心およびその近郊において売り出されている収益用不動産は、本来の価値以上に高額です。もはや不動産賃貸事業の対象外と考えるべき物件が増えています。もちろん、売却してキャピタルゲインを狙うことは極めて困難です。

 このため、単純に考えると今後は値下がりが想定されます。しかし、問題は外国人投資家の動向です。最近の円安により、日本の不動産価格はドルベースで約2割も値下がりしました。このため、外国人投資家が国内の収益用不動産をドンドン買い上げているのが現状です。物件を購入した外国人投資家は、将来において円高になった際に高値で売り抜けることを考えています。

 つまり、円安が進行している間は値下がりしにくいのではないかと思います。そして現在の円安が円高に変わった場合は、大きな値崩れが起きる恐れがあります。そのようなことがいつ起きるかは「神のみぞ知る」と言えます。