賃貸物件の連帯保証人は、連帯保証人を辞めることができるか

2021年4月23日

親族または友人が賃貸物件を借りる際に連帯保証人になってもらいたいと懇願され、連帯保証人を引き受けている方は多くいらっしゃると思います。

連帯保証人を引き受けられている方の大半は、「連帯保証人としての責任を追及されることはまず考えられないし、万が一責任を追及されても相応の収入があることから何とかなるであろう。」とお考えになり、引き受けたのだと思います。

ところが、新型コロナウイルス禍のために賃借人が勤めていた会社が廃業してしまい、次の就職先が見つからないことから家賃を滞納してしまい、連帯保証人が滞納家賃の支払いを求められる事案が急増しています。

「友人が賃貸アパートを借りる際に連帯保証人を引き受けたが、友人が勤務先を解雇された場合を考えると心配なので連帯保証人を辞めたい。どうすればよいか。」という相談を受けることがあります。

連帯保証人を辞めるのは簡単ではない
連帯保証人は、賃貸物件のオーナーに対し、保証債務を負担しています。これは連帯保証人と賃貸物件のオーナーとの間に締結された契約です。このため、連帯保証人の地位を辞したい場合は、他の方に連帯保証人を引き受けていただく必要があり、引き受け手が現れない場合には連帯保証人を辞めることはできません。

賃貸借契約には普通借家契約(普通賃貸借契約)と定期借家契約(定期賃貸借契約)とがあります。普通借家契約の更新には通常の更新と自動更新(法定更新)がありますが、いずれの更新でも連帯保証人による保証債務は継続されます。契約更新の際に、連帯保証人が契約書に署名捺印しなかった場合でもそのようになります。(最判平9.11.13)

「普通借家契約(普通賃貸借契約)の更新後は連帯保証人による保証債務はなくなり、責任を逃れられる」と勘違いされている方が多くいらっしゃいます。しかし、普通借家契約が更新される場合は、オーナーおよび連帯保証人との間に締結されている連帯保証契約も更新されることから、連帯保証人による連帯保証債務も継続します。「普通借家契約が更新されたことをもって、連帯保証人を辞めることになる」というのは誤りです。

定期借家契約は、契約期間の到来により契約が終了します。契約が終了すれば、連帯保証人の地位を外れます。賃借人が定期借家契約の再契約を希望し、連帯保証人を再び引き受けるように依頼された場合には、「新しい契約なので、連帯保証人は別の人を探してもらいたい。」と告げることにより、連帯保証人の引き受けを拒絶できます。

連帯保証人を辞めることができる場合
以下の場合は連帯保証人を辞めることができます。

・賃貸借契約が終了した場合
・他の連帯保証人が連帯保証債務を引き受けた場合
・連帯保証人が死亡した場合(令和2年4月施行の民法および関連法の改正による)

※連帯保証人が死亡した場合について
連帯保証人が亡くなる前に生じた連帯保証債務は連帯保証人の相続人が負担します。この点は、改正民法に従う場合も同様です。
しかし、改正民法では「連帯保証契約は連帯保証人の死亡時点で終了」とされるため、連帯保証人の死亡後に本人が発生させた債務については、連帯保証人の相続人は免責されます。

普通借家契約(普通賃貸借契約)の連帯保証人が連帯保証人を辞めたい場合
オーナーまたはオーナーから契約更新手続きを依頼されている不動産会社に「次回の契約更新時に連帯保証人を辞めたい。契約更新後は家賃保証会社による保証をお願いして欲しい。」と相談することをお勧めします。

都市部の場合、契約更新を自動更新(法定更新)にすることはまずありません。自動更新にしてしまうとオーナーは更新料を受け取れません(2021年3月27日追記:自動更新の場合でも賃借人は更新料の支払い義務がありますが、このことを知らないオーナーが多く、請求を怠るので受け取れないという意味です)し、オーナー側の不動産会社も更新事務手数料を徴収することが出来ないからです。なお、契約更新が自動更新(法定更新)の場合は、連帯保証契約は自動的に継続しますので、注意が必要です。

令和2年4月の民法改正により、第三者が連帯保証人の引き受け先になる場合には極度額を提示し、公正証書を作成しなければならなくなりました。これは賃貸借契約を更新する際にも該当します。「極度額が多額である上に公正証書の作成までしなければならないのであれば、連帯保証人を引き受ける意思はない。家賃保証会社による保証をお願いしたい。」と告げることにより連帯保証人を辞められます。

家賃保証会社が「引き受け不可」とした場合ですが、連帯保証人の引き受け依頼先となる方が公正証書の作成を拒否しているのであれば、連帯保証人を継続して引き受けていただくことはできません。オーナーにとっては大変な痛手になりますが、連帯保証人が存在しない賃貸借契約として更新することになります。

ちなみに「連帯保証人を辞めたいので保証会社に保証してもらいたい。」と契約期間の途中で申し出た場合にどうなるかですが、家賃保証会社は連帯保証人を辞めたい理由に注目します。家賃保証を引き受けるかを判断する審査が厳しくなります。連帯保証人を辞めることは、契約更新時までできないかもしれません。

※2021年3月27日追記:実務上は、事業用物件についてのみ公正証書の作成を求めることで運用する不動産会社が大半のようです。事業用物件でも契約者が法人であり、事業主またはその配偶者が連帯保証人になる場合は、公正証書の作成は不要とされています。このため、取り消し線を付けさせていただきました。