親が所有する既存の戸建住宅を賃貸用戸建住宅に転用する際の注意点(主に郊外の場合)

昨日は、既存の戸建住宅を賃貸用戸建住宅として運用するには多額の費用を要することがあり、改修・リフォーム費用と収益とのバランスを検討するべきであることについて書きました。

実は、費用以前の問題として、賃貸住宅に転用したいと考える戸建住宅が郊外にある場合には法令及び条例が賃貸住宅への転用を認めないことがあります。

具体的には、戸建住宅が市街化調整区域内にある場合、および農地にある場合が問題になります。

1.戸建住宅が市街化調整区域にある場合
市街化調整区域を一言で言うと「市街化を抑制するべき地域」として定められた地域です。公共施設や医療施設を除き、建物の建設や増築を極力抑制することが定められている地域であり、原則として宅地の造成および建物の建築は認められません。

平成12年の都市計画法改正により、既存宅地制度が廃止されました。市街化調整区域としての指定を受けた時点で建物が建設されていた土地については都道府県知事の確認により「既存宅地」として建物の建設が認められていましたが、経過措置期間が終了した平成18年5月18日以降は、原則として新たな建物の建設ができなくなりました。

通常、市街化調整区域内における建物を新築する際には、建物の建築目的を自己居住または自己の業務用として申告していると思われます。このため、自己居住目的で所有する戸建住宅を賃貸用戸建住宅にするためには用途変更の手続きが必要です。

建物の所在地が市街化調整区域内にある場合、用途変更には都道府県知事による許可が必要です。法理論としては都道府県知事の許可があれば用途変更可能ですが、許可を得られることはまずありません。このため、自己居住用として建築された戸建住宅を賃貸住宅用途に用途変更することは原則として認められないと考えて差し支えありません。

ただし、都道府県または市区町村の条例により、建築後一定期間が経過している住宅の場合は用途変更が認められる場合があります。

「市街化調整区域に指定されている場所でも賃貸住宅が多く建っている」と反論されるかもしれません。しかし、戸建住宅の場合には所有者が自ら居住しているのか、賃貸住宅として第三者に貸し出しているのかは外観からはわからない場合がよくあります。建物の所有者を登記簿から調べ、住民票と照合するマンパワーが行政側に不足しているだけの問題であると思います。

2.戸建住宅が農地にある場合
農地については農地法第3条、4条、5条により、その権利の移動および用途の変更が厳しく制限されています。農地で農業を営む方が、自身の居住目的で自宅を建設する場合は、農業委員会の許可を得ることにより認められます。しかし、農業を営む方が居住している既存の住宅を賃貸用住宅にすることは、農業委員会が許可しません。

よって、農地にある戸建住宅を賃貸住宅として転用することはできません。