「山を買う」という行為が一部でブームですが...

 動機は様々ですが、「山」を購入される方がいらっしゃいます。

 中には収益目的で購入される方がいらっしゃいます。例えば山の中を送電線が通過している場合、電力会社から土地の占有料を得られるので購入される方がいらっしゃいます。また、グランピング用地として整備し、収益目的で運用している方がいらっしゃいます。

 全ての山が収益目的で利用できるわけではありませんが、極めて安価で売られている山を購入し、高利回りで運用している方がいらっしゃいます。

 その他にも自分の別荘を建てる方、広大な土地を整備して農地にする方がいらっしゃいます。

「山」を「安い」という理由だけで購入すると悲惨な目に遭うことがある

 様々な法令上の制限が及ぶ山があります。一帯が自然公園法により特別保護地区、特別地域に定められている場合は建物の建設、樹木の伐採に厳しい制限が課されており、違反した場合には罰則が適用されます。違反した場合は山の所有者でも罰せられます。

 別荘として利用する目的でログハウスを建てたところ、建物の建築が認められない自然公園法の特別地域内であることから直ちに取り壊すように行政から命令された方がいらっしゃいます。

 また、地方自治体が一帯を市街化調整区域に指定している場合は建物を建設できません。市街化区域に指定されている場合は農地に転換できません。違反した場合にはいずれも罰則があります。

 見落としがちなのは、擁壁の設置および維持に関する費用です。急峻な崖があり、その下に道路や家がある場合は崖崩れを防止する措置が必要です。具体的には擁壁工事をすることになりますが、崖部分が広大な場合は億円単位の費用が発生することがあります。

 擁壁工事を怠った崖が崩れ、崖下部分で人的被害または物的被害が出た場合には損害賠償責任が生じます。

 また、川などの水路がある場合にはその状態を確認する必要があります。普段は全く水が流れていなくても雨が降ると川が出現し、いわゆる鉄砲水を生じることがあります。 麓の家屋が鉄砲水による被害を受けた場合、山の所有者が民事上および刑事上の責任を負わされることがあります。

 付近一帯に鉱山がある山には注意が必要です。土壌にクロムなどの重金属やヒ素が含まれている場合があります。特に鉱山の近くに立地する山の場合、鉱物を精錬する際に発生する鉱滓の廃棄場所として利用されていた履歴がある場合がありますので、この点についても所有者に確認する必要があります。

 購入を検討する山が広大な場合でも細かく確認する必要があります。広大すぎて確認しきれない場合は、その山の購入を見送ることが賢明かもしれません。