買ってはいけない収益物件(その5、擁壁が古い傾斜地)

 傾斜地の上に建つ収益物件の購入には特段の注意が必要です。傾斜地の場合、切り土または盛り土による造成工事を行い、擁壁を構築して平坦な地面にならした後に建物を建設します。

 傾斜地に建物を建設するために切り土または盛り土を行う場合、大半の場所において建築確認申請および検査が必要とされています。擁壁部分の強度が弱いといわゆる「崖崩れ」が起き、建物が崩落して重大な死傷事故を招くことがあります。

 造成された時期が新しければ、それ程心配することはありません。しかし、造成された時期が何十年も前である場合、擁壁をコンクリートブロックや石を置いてコンクリートで固めただけのところがあります。このような擁壁は台風や大雨の後に崩れることがあります。

 崖崩れが起きる際は、全ての崖が一度に崩落するとは限りません。擁壁に使用されている大きなブロックや石が一つずつ下に落ちることがあります。下に民家や道路がある場合、死傷事故に繋がる恐れがあります。

 また、造成時期が古い場合、盛り土部分の土がしっかり固められていないことがあります。このような場合、長い間に地盤沈下が起きる恐れがあります。

 地盤沈下が発生すると建物の外壁にひびが入り、さらに床が傾く、扉および窓の開閉が困難になる等の原因になります。建物の外壁にひびが入ると雨水が浸入します。雨水が躯体や柱に到達すると、建物の強度を弱めます。

 床が傾いている収益物件では入居者が短期間で退去します。退去の理由はめまいがする、平衡感覚がおかしくなる等の理由です。短期間の間に繰り返しリフォーム、ハウスクリーニング、入居者募集を行うのでは、赤字になることがあります。

 最大の問題は、古い擁壁や盛り土に起因する地盤沈下や建物の損傷に対しては、ほとんどの場合に損害保険が適用されないことです。建物の損傷や傾きが盛り土や擁壁などの経年劣化に起因すると見做された場合、その損害は所有者が甘受するしかありません。

 傾斜地に盛り土を施した上に建築された収益物件で、擁壁が古い物件は購入を避けるのが賢明です。