賃貸物件、高齢者の入居は不可とする物件が多いが...

賃貸物件における入居者募集を依頼される際に、「高齢者は入居をお断りしてください。」と言われることが多くあります。その理由は、概ね以下の通りです。

1.孤独死をされると事故物件になる
2.収入が年金だけでは生活できないので賃料の滞納につながる懸念がある
3.病気になった場合に賃料を滞納される恐れがある
4.若い居住者とトラブルになる懸念がある

本日は、これらの理由が正しいか、杞憂ではないかについて検証します。

今後、賃貸物件に生活するしかない高齢者の激増が予想されます。厚生労働省の資料によると、2025年における65歳以上の高齢者は3,657万人と推定されています。
高齢者の入居を不可とする賃貸物件が多いですが、いつまでも入居不可にすることは社会的に許されなくなるのは自明です。

1.「孤独死をされると事故物件になる」について
テレビのバラエティー番組等において誤りのある内容がよく放送されていますが、孤独死が発生すれば直ちに事故物件になるわけではありません。一人住まいの方が病気により室内で死亡しても早く発見されたことにより、御遺体を原因とする室内汚染がなく、かつ異臭が発生していなければ、事故物件にはなりません。

孤独死は、管理会社がそれなりの頻度で見回り、さらに警備会社などが提供する見守りサービスなどを活用することにより回避できることが多いです。

1週間~10日に1回の頻度で管理会社が安否確認の連絡を入れることを承諾する旨の特約を賃貸借契約の中に盛り込み、さらに見守りサービスを受けることについても特約条項に入れることで、孤独死はかなり回避できると思われます。

万が一、発見が遅れたことにより特殊清掃が必要になっても、その費用は賃貸借契約締結時に締結する損害保険の特約として付帯させることが可能です。

また、病気のために通常の生活を続けられなくなった場合は、地方自治体に相談することにより相応の施設を紹介して貰えることが多いです。

最近は若い方の室内自殺が増えています。室内で自殺事件が発生した物件は必ず事故物件になります。事故物件になる懸念があるのは、高齢者が居住している物件だけではありません。

2.「収入が年金だけでは生活できないので賃料の滞納につながる」について
これは全ての高齢者に当てはまることではありません。

不動産会社における入居審査の項目の一つは収入です。確かに年金だけでは生活費を捻出できない方は多いですが、私が以前にお世話したお客様の中には元国家公務員であり、御夫婦で貰える年金が月80万円近くになる方がいらっしゃいます。年金だけで生活できない方ばかりではありません。

オーナーの懸念はもっともなように思えますが、「高齢者イコール滞納予備軍」ではありません。若い方でも高齢者でも、収入相応の賃料の物件に入居して貰うことで問題ないと思います。

収入が年金のみである方は、それなりの安い賃料の物件に入居していただくことになります。入居審査をしっかり行っていれば、滞納される確率はかなり低いです。

質の良くない一部の不動産会社(仲介手数料を少しでも多く稼ぎたい)が、収入が少ない方に家賃が高額な物件を紹介してしまうことが、滞納が発生する原因の一つであるといえます。

3.「病気になった場合に賃料を滞納される恐れがある」について
病気になるのは高齢者とは限りません。最近では若者が過労により倒れる事案が増えています。

万が一賃料の滞納が発生した場合に賃料を支払ってもらうために連帯保証人を立ててもらい、または家賃保証会社による保証をしてもらうわけです。賃料が支払われなくなる懸念はありません。

若い方でも病気になりますし、交通事故に遭遇して入院することもあります。若い方が勤務している会社が倒産したことから無収入になり、賃料を滞納してしまうことも想定できます。賃料滞納に対する懸念は、高齢者だけにあてはまるものではありません。

4.「若い居住者とトラブルになる懸念がある」について
まともな不動産会社であれば、トラブルを多発させそうな方は年齢に関わりなく入居をお断りしています。

私の会社では、相談の際にテーブルをたたく、椅子を蹴飛ばす、筆記具を投げる等の行為をされた方には物件の紹介を打ち切り、その場でお帰りいただいています。

希望条件に合致した物件がなかなか見つからない等の理由により、暴力行為に及ぶ方がたまにいます。この様な方は、入居後に必ずトラブルを起こします。

入居開始後にトラブルを頻発させる方は年齢にかかわりなく、一定の割合で存在するようです。トラブルになった場合、高齢者に非があるとは限りません。若い方の行為が原因であることが多くあります。よって、これも高齢者を排除する理由にはなりません。

まとめ
居住者を若者だけにすれば事故物件にならずに済むことはありません。若者でも病気や事故に遭遇することがありますし、室内自殺もあり得ます。

以下の内容を実施することにより、高齢者を入居させることによるリスクは相当に低減します。

入居審査を不動産会社にしっかり行ってもらう。
収入について、しっかり確認してもらう。
健康状態をチェックする。
高齢者見守りサービスに加入してもらう。
災害保険に特殊清掃費用に関する項目を加えてもらう。

繰り返しになりますが、そう遠くない先に、高齢者の入居を一律不可にすることは社会的に許されなくなります。高齢者の激増が迫っているからです。