賃貸物件の入居審査について

「賃貸物件への入居申し込みをしたが、入居を断られた。」という相談を受けることがあります。

入居者募集の際に、オーナー様から「高齢者、外国人、生活保護受給者については一律に入居をお断りして欲しい」と言われることがあります。

その他にも「学歴を聞き出し、一定レベル以上の大学を卒業している方に限定して欲しい」とか、「上場企業に勤務している方に限定したい」、「芸能人は入居を断って欲しい」、「水商売の方はダメ」、「中学生以下の子どもがいる夫婦はダメ」等、無茶ぶりとしか思えない内容を要求されることがあります。

私の会社では、このような内容を要求するオーナーの物件には誰を紹介しても成約しないことが多いので、入居者募集をお断りすることもあります。

私の会社では、賃貸物件における入居審査の項目は以下の通りとしています。
職業
健康状態(バリアフリー物件にする必要があるか、介護が必要な方ではないか)
収入(賃料に見合った金額か)
連帯保証人、または家賃保証会社による賃料支払の保証があるか
オーナーおよび管理会社との意思疎通に問題が無いか(日本語がある程度理解できるか)
外国人の場合は在留許可があるか

お年寄りや外国人、生活保護受給者などであっても、審査基準は同じです。

1.居住される方の氏名、年齢、職業、身分証の確認
私の会社では健康状態に問題が無く、かつ賃料を支払える収入(年金を含む)があれば、高齢者でも物件探しを断ることはありません。しかし、「高齢者の入居は全て不可」とするオーナーが多く、内見すら断られる場合が大半です。残念ながら、高齢者の入居を頑なに拒むオーナーが多いです。

このため、ご希望の条件に合致する物件がある場合でも、オーナーが断ることから紹介できないことが多いです。このことの是非および妥当性については、明日の投稿で詳しく書きます。

外国人の場合、日本における在留許可があるのかを確認し、契約時および入居後の意思疎通に問題が無いかを判断します。意思の疎通が図れる場合は、オーナー様に説明し、入居の承諾を取ります。

日本語も英語も理解できない方は、入居不可としても仕方ないと考えます。以前、現地の言葉(スワヒリ語?)しか話せず、日本語も英語も理解できない方が私の会社に来られました。片言の日本語すら理解できず、何のために来店されたのかも話せません。これでは重要事項説明や契約内容の説明を行えませんし、入居後もオーナーとの意思疎通が出来ません。最も大きな問題は、在留許可が出ているとは思えないことです。折角ご来店いただいたのですが、お帰りいただくしかありませんでした。

複数人が居住される場合は、居住者相互のご関係をお尋ねします。ご家族であれば問題ありません。しかし、友人などとのルームシェアの場合は転貸や一部の居住者の退去があり得るので、念入りに確認します。

2.居住者の健康状態
階段の昇降に難がある方はバリアフリーの物件を紹介することになります。

賃貸マンションやアパートへの入居は、部屋が異なるとはいえ、同じ建物に居住される方との共同生活となります。御病気のために共同生活が困難であると思われる方、または介護が必要であると思われる方は、市区町村役場等から適合する施設への入居を勧めてもらうことになります。

3.職業と収入
無職かつ無収入の場合はお断りするしかありません。「多額の貯金がある」と言われることがありますが、無収入であれば入居審査すら行うことはできません。

「上京して就職先を探したい。勤務先は決まっていない。就職先を探すためにホテルに連泊するとホテル代が高くてたまらない。月賃料が安いアパートに先に入居したい。」という相談が時々あります。お気持ちは理解しますが、この場合も入居不可です。

希望される物件の月賃料(共益費との合計)が月収の4分の1以下であることが目安になります。地域や物件のグレード、賃料により3分の1以下に設定しているところもありますが、収入と比較して賃料が高い物件を希望されても受け入れることは困難です。

源泉徴収票の提出を拒む方、勤め先として申告された会社が存在しない、または申告された会社を退職している場合も入居不可になります。職場への在籍確認は必ず行います。

年金生活者の場合は、年金と併せた収入で月賃料を支払えるのであれば、収入面は問題なしと判断します。

4.連帯保証人、保証会社
令和2年4月1日より施行された改正民法により、連帯保証人には保証の極度額を伝えなければならなくなりました。最大で2年分の賃料(共益費等との合計)を支払っていただく可能性があることを伝えます。都心の物件の場合は結構高額になるので、親族でなければ、連帯保証人を引き受ける方はほとんどいなくなったと言える状況です。

連帯保証人を立てる場合は、連帯保証人の印鑑証明書と連帯保証人引き受け承諾書への実印押印を求めます。さらに勤務先に対する在籍確認を行います。印鑑証明書が提出されない場合は入居不可となります。

連帯保証人を立てない方は、家賃保証会社に保証を受けるための審査を行います。過去に家賃の滞納歴がある方、クレジットカードの請求に対する支払いが遅延した方は、保証の引き受けを拒否されます。依頼する家賃保証会社を別の会社にしても審査を通過出来ない方は、入居不可とさせていただくしかありません。

生活保護受給者は、公的機関(市町村役場など)による代理納付(毎月の家賃を市町村役場等からオーナーの預金口座に直接振り込む)が行われることが確実であれば、収入を問題としてお断りする理由はありません。緊急時連絡先を確認し、可能であれば連帯保証人を立てるか、家賃保証会社による保証を受けられるようにします。

まとめ

「高齢者、外国人、生活保護受給者については全て入居不可。入居後に問題が発生するから。」と言われるオーナーが多くいますが、入居審査をしっかり行うことにより、大半のトラブルは回避できます。

それ程遠くない将来に「一律に拒否するべきではない」とする世論が形成されると思われます。既に東京都は「オーナーを啓蒙して欲しい」と宅建協会等に再三にわたり伝えています。

全て一律にお断りすることが社会的な批判を浴びるのは、それ程先ではないと感じています。