シェアハウスが抱える問題点(オーナー様向け)

数年前まで、収益物件としてシェアハウスを建設することが流行しました。キッチン、食事用スペース、浴室を共用とすることにより水回り設備の建設および維持コストを低減でき、興味や趣味が近い方を集めることにより空室期間を短縮できるとして、多くの不動産会社や建築会社がシェアハウスの建築を盛んに推奨していました。

しかし、現在は新たに建設されるシェアハウスはかなり少なくなっています。とはいえ、常に満室に近く、空き生じても直ぐに入居者が決まる、優秀な物件もあります。

シェアハウスが抱える問題点については以下の通りです。

1.シェアハウスに対する融資は元々承認されにくいが、審査がさらに厳格化
「かぼちゃの馬車」について、記憶されている方は多いと思います。地域相場を無視した高額な家賃収入を得られるとして大規模な宣伝を行い、サラリーマン等に投資を勧誘しました。収入が低いことから本来であれば融資を承認されない方に対してもスルガ銀行が書類をねつ造して融資を行いました。

相場を無視した家賃収入を前提として資金計画を設定していたことから、オーナーの多くは期待していた家賃収入を得られませんでした。さらに、多くのオーナーは、本来の建物の価値を大きく上回る価格で購入していたことから、売却しようとしても投資資金を回収できませんでした。このため、多くのオーナーが自己破産に追い込まれました。

この事件が起きたことによりシェアハウスに対する融資は一層厳しくなり、シェアハウス案件には一切融資しない金融機関が増えています。このため、最近では新築されるシェアハウスはかなり少なくなっています。

2.予定していた収入を得られない(利回りが低い)
シェアハウスへの入居を希望される方の大半は、賃貸アパートよりも家賃が安いことを期待しています。都心の物件でも、月家賃(共益費込み)7万円を超えるようだと、余程の特徴が無いと満室にすることは難しいと言えます。

ドミトリー形式(いわゆる相部屋にし、二段ベッドを導入)を採用しなければ、高利回りの物件にすることは困難です。しかし、ドミトリー形式は犯罪の被害者になる危険があるとして人気がなく、満室にすることは困難です。

3.住人同士のトラブルが起きやすい
家賃を低く抑えるため、共用部および浴室の清掃等を当番制にしているところがあります。ところが清掃をサボる住人が必ず発生します。このような人を説得して清掃に参加させることは著しく困難であることがよくあり、他の住人との間のトラブルに発展しがちです。

また、キッチンを共用にして当番制で料理を造るところでは、料理の配膳が済んでいないのに誰かが先に食べてしまう等、レベルが低いトラブルが発生することがあります。

その他にも、いわゆる安普請で建設されている建物が多いことから隣室の音が聞こえる、住人が学生の場合に友人を招き入れて早朝まで大声で騒ぐ、他の住人に貸した物を返してくれない、共用部に置いてあった私物や財布がなくなる等のトラブルが発生することがあります。

また、住人が新興宗教の信者である、政治団体に属している等の場合、仲間を勧誘したいことから他の住人にしつこくつきまとう等の行為をすることがあります。

シェアハウスにおいて住人同士のトラブルをなるべく発生させないためには、入居前に必ず面談し、人物を見極める必要があります。しかし、それでも住人同士のトラブルが起きます。

4.家賃保証会社による保証契約を締結しにくい
このブログでは何回も記述していますが、2020年4月に施行された改正民法により、連帯保証人を立てる際には連帯保証債務の極度額を告知する義務が定められました。このため、連帯保証人を引き受ける方が減っています。それでも一般的なシェアハウスの場合は家賃が安いことから、親族であれば引き受けてくれる可能性があります。

しかし、親族が定年に達して無職である等の場合は、オーナーまたは管理会社はこの親族の方を連帯保証人にすることを認めないことが大半です。さらに連帯保証人を引き受けてくれる方が誰もいないことがあります。

このような場合に入居希望者と家賃保証会社との間に保証契約を締結させたいと思っても、シェアハウスに対応する家賃保証会社は限られています。空室が生じた際に不動産会社に客付けを依頼したくても、その不動産会社がシェアハウスに対応する家賃保証会社と提携していなければ、客付けを断わられることがあります。

5.家賃を滞納する住人への対応を誤ると、他の住人に悪影響を及ぼす
滞納が続く場合、賃貸借契約を解約して退去をお願いすることになりますが、退去を拒み、居座られた場合の対応が困難です。督促のために訪問する際には他の住人が共用部にいることがあるので、特段の配慮が必要です。

裁判手続きで退去させる場合、最終的手段として行う強制執行は他の住人に対する影響が大きいです。住人が一斉に退去する原因になるので、強制執行にはなかなか踏み切れないのが実情です。

※明日は、成功しているシェアハウスについて書きます。