改正民法の施行により、在籍会社・アリバイ会社は消滅へ

賃貸物件を借りたいということで不動産会社に来店される方の中には属性があまりよくない(無職、住所不定、勤務先が無名かつ企業活動の実態が不明、その他)方がいらっしゃいます。

このような場合、質の良くない不動産会社ではどこかの会社に勤務していることを装う、架空の連帯保証人を立てる、またはいくらかの金銭を渡すことにより第三者に連帯保証人を引き受けてもらう等を行い、貸主を信用させることがありました。

入居希望者が無職である場合は、どこかの会社に勤務していることにして入居申込書を記入し、在籍確認(通常は電話)の際には在籍会社またはアリバイ会社が用意する電話番号にかけさせるという方法が良く行われていました。

また、連帯保証人を引き受ける人が誰もいない場合は、いくらかの金銭を渡すことにより連帯保証人を引き受ける人との仲立ちを行う会社に依頼することがよく行われていました。

大手上場企業の従業員でも、サラ金やヤミ金から金を借りた等の理由により金銭に窮している方がいます。そのような方に声を掛け、連帯保証人引受承諾書への署名・捺印、印鑑証明書の提出、および在籍確認の電話への応対をしてもらうかわりにいくらかの金銭を渡す、いわゆる「闇バイト」が横行していました。

このような「闇バイト」に応じる方を募集し、質の良くない不動産会社との仲立ちを生業とする会社が多くありました。

2020年4月に改正民法が施行されたことから、多くの賃貸物件において家賃保証会社の利用が必須になりました。家賃保証会社では、入居希望者に対し、保証契約を締結できるかに関する審査を行います。

家賃保証会社における審査内容の詳細は公開されていませんが、家賃保証会社では収入証明書類(源泉徴収票など)等を確認し、さらに指定信用情報機関のデータベースを利用することにより勤務先、過去の滞納歴(家賃、クレジットカード、その他)を徹底的に調べます。ごまかすことは、まず不可能です。

逆に、家賃等の滞納歴が無い場合は、無名の会社や風俗関連業に勤務している方でも、収入と家賃とのバランスが取れていれば保証契約の締結が承認されます。

また、大半の賃貸物件において、連帯保証人を引き受けられる方がいるだけでは賃貸借契約の締結を承認しないことになりました。このため、いくらかの金銭を渡すことにより連帯保証人を引き受けてもらう行為は、無意味になりました。

昨年の繁忙期には、私の会社にも在籍会社やアリバイ会社からの広告が多く届いていましたが、今年の繁忙期では広告をほとんど見かけません。在籍会社およびアリバイ会社は淘汰されつつあると言えるでしょう。