不動産業界、電子契約は活用されているか

マイナビニュースの記事から引用します。

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不動産業界の電子契約の実態とは? 約7割が「紙の契約締結で十分」と回答
2023/07/27 16:19
著者:早川厚志

GMOグローバルサイン・ホールディングスと全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)は7月27日、不動産事業者を対象に不動産取引における電子契約の実態に関する共同調査を実施し、不動産取引における電子契約の利用状況や課題についての実態を明らかにした。

この調査は、6月1日~6月9日の期間、「電子印鑑GMOサイン」の利用者および検討者、 全宅連の会員を対象にインターネット調査により実施したもの。

電子契約を導入する企業のうち、71.2%が実際に電子契約を実施した場合の顧客は「おおむね好評だった」と回答した。新型コロナの影響で電子契約システムの普及が拡大したが、不動産業界のエンドユーザーである顧客からのニーズは、新型コロナが収束し始めた現在でも一定以上存在していることがわかる。

電子契約システムの導入効果として、「契約書等の書類送付の省力化および業務効率化が実現」(56.6%)、「顧客との日程調整が容易になる」(53.9%)、「印紙税コスト削減」(50.0%)、「書類保管・管理が容易になる」「ペーパーレス化の実現」(48.7%)など、導入目的をおおむね達成していた。

不動産業務に関連するツールやシステムの導入状況をみると、「テレビ会議システム」が19.8%で最多となった。しかし、「特にツールを導入していない」と回答した割合が57.2%と、不動産DXがまだ発展途上にあることが判明した。

電子契約システムを導入していない企業のうち、さらに「現時点で導入に向けて検討および予定もない」と回答した企業の約7割(69.5%)が、未導入の理由として「紙の契約締結で十分」と回答し、56.7%が「顧客からのニーズがない」と回答した。

企業側では、「電子契約システムを使いこなせる担当者の不在」が37.4%、「電子契約をよく知らない」が36.6%、「デジタル化への苦手意識」が29.0%、「電子契約のセキュリティへの不安」が27.3%といったデジタル化に関する懸念が存在し、顧客も含めてデジタル化への懸念と電子契約が一般化していない現状が示された。

2022年5月に改正宅建業法が施行された際に公表された、電子契約とIT重説に関連するマニュアルに基づく実務課題が明らかとなった。課題として挙げられた項目は以下の通りです。

2022年5月に改正宅建業法が施行された際に、国土交通省が発表した電子契約とIT重説に関連するマニュアルにおいて、実務上の課題として「電子契約実施前に書面やメールでの事前承諾が必要」と回答した割合が6割以上(66.0%)あったほか、「重要事項説明書交付時の開封確認と署名パネルの説明」(35.8%)、「重要事項説明書と契約書の同時送信ができない」(26.4%)、「署名パネルが表示されないためスマートフォンで完結できない」(19.8%)といった課題が挙がった。さらに、調査では「紙の契約書と同等の取り扱いを希望する」割合が24.5%となり、これらの課題や要望が明らかになった。

マイナビニュース

 約1年前、「これからの不動産業はデジタル化が必要、電子契約とIT重説が出来ない不動産会社は淘汰される。」等と言われていました。

 しかし、電子契約およびIT重説を希望するお客様は意外に少ないのが実情です。筆者の会社における売買仲介のお客様は、紙の重要事項説明書及び契約書を希望される方が多いです。契約書に貼付する印紙代が必要でも構わないと言われます。

 また、複数の不動産会社が介在する仲介取引の場合、各不動産会社が採用する電子印鑑の仕様が異なることが問題になります。この場合は各社間における調整が必要であり、煩雑です。

 お客様のPC環境や通信回線により電子契約を行えないことがあります。スマートホンの場合は二種類以上の書類の同時参照が困難なので、電子契約に不適です。

 さらにPCが光回線とWi-Fi接続していると、画面の動きが突然止まる、音声が聞こえなくなる等が起きることがあります。IT重説前のテスト接続の際には問題がなかったのに本番では接続が不安定になり、契約を中止しなければならないことがあります。

 通信の不具合を改善できない場合は日時を改めて取引の関係者が集まり、紙の重要事項説明書および契約書による契約を行います。

 しかし、売買取引で紙の契約書を作成する際は、理由の如何を問わず収入印紙を貼付する必要があります。このため、「通信に不具合があるからといって印紙の貼付が必要になるのは納得できない。」という内容のクレームがお客様から寄せられます。

 IT重説や電子契約を容易に行えるツールは少なく、発展途上と言えます。導入コストの問題もあります。不動産業界における電子契約は、まだ一般化されているとは言えない状況です。