賃貸借契約、鍵を渡す時期(オーナー様向け)

 賃貸借契約の締結後、鍵を渡す時期についてオーナー様から質問されることがあります。不動産会社が仲介をしていても安心できない場合があります。

 入居希望者の中には賃貸借契約の当日、「重要事項説明を受け、契約を締結したい。ただし、敷金、礼金、前家賃および仲介手数料は後日の支払いになる。契約したらその場で鍵を渡してほしい。」と言われる方がいます。

 多いのは「銀行から預金を引き出そうとしたが、一日の限度額を超えるので引き出せなかった。このため、全額の支払いは後日になる。」というパターンです。

 このような場合、筆者は賃貸借契約の締結延期をお勧めします。ところが現在は繁忙期です。不動産会社の担当者の中には多忙なあまり、オーナー様に対し「後日の入金になりますが、鍵を渡すことを許可してください。」などと言う者がいます。

 オーナー様(または不動産会社)が鍵を渡す行為と敷金・礼金・前家賃・仲介手数料の支払いは同時履行の関係にあります。このため、代金が支払われない場合、オーナー様および不動産会社は民法第533条により鍵の引渡を拒否できます。

民法

(同時履行の抗弁)
第五百三十三条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

 敷金や前家賃が支払われていないのに鍵を渡して入居を認めると、悪影響が生じることがあります。入居希望者が「家賃の支払いを多少遅延しても構わない。」と錯覚することが想定され、家賃の支払いが遅れる原因になります。

 また、敷金や前家賃を支払うことなく居座り、次の月になっても支払われない等も想定されます。

 オーナー様におかれては、不動産仲介会社の担当者から「後日の入金になりますが、鍵を渡すことを許可してください。」等と言われても応じないことをお勧めします。