賃貸物件のオーナー様はご注意ください

 1~3月の繁忙期がスタートしました。賃貸物件の退去者が一気に増えるので対応に追われます。その後はリフォームなどを行い、新たな入居希望者を探すことになります。一年の中で、オーナー様および賃貸物件の管理会社が最も忙しくなるのが1~3月の繁忙期です。

不動産会社を排除して賃貸物件を借りたがる入居希望者に注意

 入居希望者の中には「不動産会社を排除した上で賃貸借契約を締結したい」とオーナー様に提案する方がいます。オーナー様のところを直接訪問し、「ポータルサイトを閲覧しました。内見させてください。」などと言います。

 内見をしてもらい、気に入ると「入居したいと思います。ところで不動産会社を通すと仲介手数料が発生します。不動産会社を通さずに契約し、仲介手数料をお互いに節約しませんか。」等と提案します。

 これに応じ、不動産会社を排除して賃貸借契約を締結し、入居を認めると取り返しが付かない事態に発展することがあります。入居を認めた途端、家賃を滞納する、第三者に無断転貸される、犯罪拠点として利用される等が起きることがあります。

 一般的な話になりますが、不動産業に従事していないオーナー様が単独で入居審査を行うことは困難です。現在、入居に際しては家賃保証会社による審査を受けることを入居の要件とする物件が増えています。令和2年4月に施行された改正民法により、連帯保証人を引き受ける方に極度額の告知が必須になったからです。

 家賃保証会社は入居希望者における家賃やクレジットカード返済の滞納歴の有無を調査します。また、書類に記載されている住所に居住しているか、申告された勤務先が正しいか、収入と家賃とのバランスが適正かを調査します。問題が見つかった場合、家賃保証会社は保証契約の締結不可と判断します。保証契約を締結できない場合は入居審査を通過できなかったと扱われ、入居を認めないのが通常です。

 不動産会社を利用せずに賃貸借契約を締結したいと考える方は、家賃保証会社による審査を敬遠します。過去の滞納歴などが明らかになることを恐れるからです。このために「仲介手数料の節約」を口実とし、家賃保証会社の審査を回避するために不動産会社の排除を提案するのです。

 不動産業に従事していないオーナー様が家賃保証会社に審査してもらうためには、不動産会社を通す必要があります。家賃保証会社は宅地建物取引業免許を保有する不動産業者を通さないと保証契約を引き受けないからです。この点からも、不動産会社の利用を強くお勧めします。

 また、不動産会社を通さずに賃貸借契約書を作成すると不完全な内容になりやすいです。通常であれば賃貸借契約を解除できる場合でも、賃貸借契約書の不備により解除できないことがあります。このことも、不動産会社の利用を勧める理由として挙げられます。

 文房具店などで賃貸借契約書の書式が売られています。しかし、反社会的勢力の排除条項や無断転貸の禁止条項等の欠落や不備が散見されるので、利用はお勧めできません。

 入居希望者から「不動産会社を通さずに契約したい。」等と言われても、応じるべきではありません。オーナー様が入居者の募集を依頼している不動産会社があればその不動産会社に連絡し、対応してもらうことをお勧めします。入居希望者から「お互いに仲介手数料を節約できます。」等と言われても応じないことを強くお勧めします。