借地上の住宅を事業用途に転換する場合の注意点

※相談事例です。プライバシーの関係で事案を少しアレンジしています。

相談事例

 A氏は都内の実家を相続により取得しました。土地権利は借地権です。この住宅の規模はかなり大きく、しかも高級住宅街にあることから学習塾の教室として利用できると思いました。
 早速工務店に間取りの変更工事を行ってもらい、数十名が入れる教室を二室造りました。その後、自ら個人経営の学習塾を立ち上げ、看板を設置しました。
 しばらくして地主の代理人(弁護士)より「塾の運営は借地の目的外使用にあたる。塾としての利用は認めない。」との警告書が届きました。
 塾を開設するなら現在の土地賃貸借契約を合意解約し、新たに事業用目的での土地賃貸借契約を締結してほしいとのことでした。借地権の合意解約により権利金が戻るものの、新たな借地権を設定するのに必要な費用は高額で、1,500万円以上の追加負担になることが判明しました。
 このような場合、追加負担に応じなければいけないでしょうか。

 A氏は「1,500万円以上の追加負担が必要になるのは酷すぎる」として筆者に相談しました。このような場合は土地賃貸借契約書の内容が問題になります。

 借地上に建築できるのは居宅だけであり、事業用途での利用は不可とされている場合は、地主の主張が認められると解されます。土地賃貸借契約書には「事業用建物の建設不可」が記載されていました。居宅を改修して事業用建物に変更する行為は事業用建物の建築と同一視できるので土地賃貸借契約に違反すると考えられます。

 この状況で学習塾の開設を強行した場合は土地賃貸借契約を解除され、借地権を失う恐れがあります。

 事業用に変更するための追加金額が過大になるのは、事業の展開によるリスクを盛り込むからです。考え方としては住宅ローンの利率より事業用ローンの利率の方が高く設定されるのと同じです。

 最近、都心では地価が高騰し、差額が高額になることがよくあります。借地上に建つ建物の利用形態を変更する際はご注意ください。