不動産を競売で購入する際は要注意(借地権 その2)

昨日の投稿の続きです。不動産を競売で購入しようとする際に、その不動産の土地権利が借地権である場合は要注意です。

借地権は登記されることがありますが、登記されることは非常に稀です。通常は土地の所有権者と建物の所有権者とが異なることにより、その土地には賃借権が設定され、建物所有者に貸していると理解します。

競売不動産の土地権利が土地賃借権(借地権)である場合は、特段の注意が必要
土地権利が借地権である不動産の競売開始が決定する場合、建物所有者が金銭に窮したことから地代を地主に支払っていないことがあります。

地代の滞納が継続して何ヶ月も続いた場合、地主は土地賃貸借契約を解約します。土地賃貸借契約が解約された場合、建物を土地に建てておくのに必要な借地権が消滅するわけですから、建物を収去して土地を地主に明け渡す必要が生じます。

地代の滞納が続いている状況で競売開始が決定されたとしても、地主としては競売の進行状況にかかわらず、土地賃貸借契約を解約したものとして行動することがあります。競売の落札者が、「地代を支払うから建物を使用したい」と地主に申し出ても、「土地賃貸借契約は既に解約されている」として、建物の使用を地主が拒否することがあります。そればかりか建物を収去し、更地にしてから土地を返還するように落札者に求めることがあります。

通常、競売の際には借地権の金額を見込んだ上で裁判所が売却基準価額を決定し、これに基づいて競売を実施します。落札者は借地権の代金相当額を含めて入札し、落札した場合に代金を裁判所に支払います。

それにもかかわらず、以下の主張をする地主がいます。
・土地を利用させない
・借地権の代金相当額を裁判所に支払ったとしても、地主が関知するところではない
・土地賃貸借契約は既に解約したので、現時点では建物が土地を不法占拠している状態である
・落札者が建物所有権を引き継いだのであれば、その負担で建物を収去してもらう

このような主張をされた場合、物件を競売で取得できた直後に訴訟で争わなければならなくなります。裁判になった場合、地代を長期間滞納した土地賃借人(建物所有者)の責任は大きいことから、地主による土地賃貸借契約の解約が有効であると見做され、競売の落札者が敗訴することがよくあります。

敗訴した場合、競売で落札して裁判所に代金を支払った場合でも、落札者の負担で建物を収去し、更地の状態で土地を渡さなければなりません。この場合、裁判所に支払った代金は戻りません。

このような物件をうっかり購入してしまい、全財産を失った方は数多くいます。

借地の物件は全て危険か
地主による土地賃貸借契約が解約されると、競売を実施して得られた代金を分配してもらいたい債権者も困ります。土地賃貸借契約が解約される恐れがある建物が高額で落札されることはありません。落札額が低いと、債権者が弁済を受けられる金額が低くなります。債権者は、これでは困ります。

地主に土地賃貸借契約の解約を思いとどまらせるため、滞納している地代を建物所有者の代わりに債権者が支払うことがあります。債権者が裁判所に地代代払許可の申し立てを行い、これが認められると債権者による地代の支払が認められます。これを「地代の代払い」と言います。

「地代の代払い」が行われている物件では、地主は競売の落札者が建物を所有することについて承諾する意思が一応はあると推定されます。「地代の前払い」が行われている物件では、土地賃貸借契約が解約される危険性は低いと言えます。

ただし、地主としては名義変更料を請求することがほとんどです。名義変更料の相場は地域によりまちまちです。私の会社がある東京の目黒では、土地の広さと路線価から計算される金額の7~9%程度を徴収する地主が多いようです。これを支払わないと、土地賃貸借契約を解約される場合があります。

借地上の物件を競売で購入する際には、裁判所に支払う金額だけではなく、地主に支払う名義変更料を前もって見積もり、用意しておく必要があります。

いずれにせよ、地主の居所や連絡先がわかる場合には、入札を行う前に地主の意向を確認しておくことが必要です。土地権利が借地の不動産に入札する際は、「地代の代払い」が行われている物件にすることをお勧めします。