賃貸住宅の競売が実行された場合、退去を迫られるか否かの見分け方

一昨日の投稿に補足があります。見分け方は簡単です。

競売が実行された場合、退去する必要があるか否かの見分け方

金融機関などが賃貸不動産に抵当権、または根抵当権を設定した日が、賃貸借契約の締結日より前である場合には、新所有者への所有権移転が不動産登記簿に反映された時点で前所有者と居住者との間に締結されていた賃貸借契約は終了します。賃貸借契約が終了したことから、新所有者は居住者に対し、物件からの退去を請求できる権利を取得します。
新しい建物の場合に抵当権または根抵当権が設定されていることが多いです。都区内における新築物件、または築20年以内の物件は、建築費または物件購入費に関する融資を受ける代わりに抵当権または根抵当権を設定していることが多いです。

しかし、金融機関などが賃貸不動産に抵当権、または根抵当権を設定した日が、賃貸借契約の締結日より後である場合は、賃借人が前所有者との間に締結している賃貸借契約は依然として有効です。貸主が新所有者に変更するだけであり、新所有者が賃貸借契約を終了させることは借地借家法が認めていません。所有者が変更したことを理由とした居住者に対する退去請求は不当な請求です。

前者の場合は、賃貸借契約を締結した際に交付される重要事項説明書にその旨の記載があるはずです。抵当権または根抵当権が設定されている場合は、宅地建物取引士はその内容を重要事項説明書に記載し、説明することが義務づけられています。

もし、重要事項説明書にかかる記載がなく、この点に関する説明を受けていない場合は、仲介を担当した不動産会社に責任があります(宅地建物取引業法第35条第1項違反の可能性大)。仲介手数料の返金または減額、引っ越し代の負担を求めても構わないかと思います。

居住中の物件に対する競売が実行される可能性があるか、抵当権者・根抵当権者であると名乗る人物が本当に抵当権者であるか等がわからない場合は近くの法務局に出向き、登記事項全部証明書を発行してもらうことにより明確になります。競売の申し立てがあり、裁判所が競売開始決定をした場合には、この登記事項全部証明書に記載されます。

住居表示とは異なる「地番」が必要になりますが、当該地域を管轄する法務局であれば、地番を検索できます。この地番に基づき、建物の登記事項全部証明書を請求すれば、抵当権、または根抵当権が有効なものとして存在するか否かがわかります。

抵当権・根抵当権に基づく競売開始が決定した場合

登記事項全部証明書を確認した結果、「競売開始決定」が登記されていた場合でも慌てる必要はありません。抵当権または根抵当権者と名乗る者が「直ぐに退去して欲しい」等の要求をしてきた場合でも、これは不当な要求です。毅然とした態度でお断りして構いません。

また、知らない方から「競売への入札を検討しているので、室内を見せて欲しい。」等と言われたとしても、入札検討中の方には内見の権利はありません。これもきっぱりとお断りして構いません。

競売手続きが終了する迄、賃貸借契約は依然として有効です。賃貸中の物件であることから、占有権は居住者にあります。設備の故障に対する対応を行う等の正当な理由がある場合を除き、所有者といえども、居住者の許可が無ければ室内に立ち入る権利はありません。

競売が実行されても、新所有者に対する所有権移転が登記簿に反映されるまでは、前所有者と居住者との間に締結されている賃貸借契約は依然として有効です。それまでの間に「直ちに退去してもらいたい。」などと言われても、それは不当な要求です。退去しなければならない場合でも、6か月の猶予期間があります。この猶予期間は裁判所が定めているものであり、新所有者には短縮する権利はありません。

また、新しい所有者が、居住者との間に賃貸借契約を締結したい等を申し出ることがあります。賃貸市場では不況が長引いていることから、賃貸条件に問題がなければ賃貸借契約を新たに締結し、問題なく居住出来る場合が多いです。