競売不動産を任意売却で購入できるか

お客様から相談がありました。
地方裁判所が競売開始を決定し、地方裁判所が運営する競売物件情報サイトに掲載されている物件の中で気に入った物件があるので任意売却に変えてもらい、買い受けることができるないかという相談です。

競売物件情報サイト:http://bit.sikkou.jp/app/top/pt001/h01/

東京都区内の物件なので、「正直申し上げて、ほぼ無理に近いと思います。任意売却で購入したい旨を関係者に連絡し、債権者である金融機関や税務署等と調整するのにはかなりの日数を要します。調整後に審査が行われますが、審査を終える前に競売が実行されてしまいますので間に合いません。」とお答えするしかありませんでした。

購入希望者から提出された買付証明を審査し、抵当権者が複数存在する場合は各々の抵当権者と調整し、各自が受領できる金額について納得してもらう必要があります。通常は、任意売却が成立した場合に税務署および抵当権者が受け取れる金額を記載した配当表を不動産会社が作成します。

税金の滞納額や一番抵当権者による貸付金の金額が多額である場合、二番または三番以降の抵当権者に配当される金額が少なくなるか、場合によりゼロになることがあります。配当される金額が少ないという理由で、二番以降の抵当権者が抵当権の抹消に反対することがあります。抵当権者全員が抵当権の抹消を承諾しないと任意売却は成立しません。配当される金額が少なくなることについて納得してもらうためには相応の日数が必要です。

また、金融機関では前述した配当表を審査しますが、本店における審査が必要になることが大半です。配当表の受領後、3週間以上の日数を要することが多いです。

金融機関だけではなく、税務署等との調整が必要になることもあります。調整に要する日数を考慮すると、任意売却に変更してもらうためには、最低でも1か月半以上前に申し出る必要があります。

しかし、東京都内の場合、競売における入札締め切り日の約1か月前にならないと、競売物件の詳細が公表されません。このため、競売物件情報サイトに掲載された後は、掲載されている物件を任意売却に変更してもらい、購入することは極めて困難であるといえます。
(任意売却に変更させないために、約1か月前にならないと公開しないのだと思います。)

任意売却により購入する希望者が現れた場合、どのくらいの金額が提示されればこれを認めるかについてですが、市場流通価格の概ね8割を想定していることが多いようです。しかし、抵当権の金額が多額である場合には、その分を加味した金額を想定していることがあります。

複数の所有者が共有しており、その共有持分のみに抵当権が設定されて物件、相続が繰り返されたために40名を超える所有者の共有になっている物件、5番抵当権者まで存在する物件などがあります。これらの物件では任意売却を行うための交渉が著しく困難であり、最終的には競売が実施されることになります。