前面道路が私道である土地や戸建住宅を購入する際の注意事項(その4)

私道の奥に複数の住宅がある集落に注意
やや長い私道の奥に数件の住宅が建つ集落があり、その集落における全ての住人が私道所有者の親戚であることがあります。私道の奥に複数の住宅がある集落にある土地、または住宅を購入する際は十分な調査が必要です。

このような集落は、大都市ではあまり見かけなくなりました。しかし、郊外には点在しています。このような集落にある戸建住宅をうっかり購入すると、購入後に大きな問題が生じることがあります。

私道や集落を開発した方が親戚同士である場合、開発費用および維持費を親戚同士で負担していることがあります。集落の周辺にある土地の購入および造成費用、公道から集落までをつなぐ私道の敷設費用、水道管の敷設費用、電気を通すための電柱設置費用、これらの維持費を住人が共同で捻出して居住しているところがあります。

集落にある全ての土地、および住宅の所有者が親戚同士であるところに、集落とは無関係の第三者が土地または住宅を購入してしまうと、集落における他の住人は「開発事業に関わっておらず、道路および集落の維持費を支払っていないのに集落内の土地や住宅を購入するとは無礼千万。親戚ではない者を住まわせるわけにはいかない。」という感情を抱かれることがあります。

実力行使
結果として、「よそ者には私道を一切利用させない」という態度に出てくることがよくあります。「掘削許可を与えない」という対応をされるどころか、「一切通行させない」という実力行使を受けることがあります。

よくあるのは公道から私道に分岐する入り口にバリケードや門を設け、常時施錠し、私道所有者および集落を構成する親戚しか鍵を開けられないようにする実力行使です。

私道の奥にある集落に複数の住宅があり、全ての住民が私道所有者の親戚である集落の土地または戸建住宅が不動産業者の仲介により売却される際は、不動産業者の責任において通行権の問題を解決した上で売却されます。

裁判所による不動産競売で売られることがあるので要注意
問題なのは、不動産競売により売却される場合です。不動産競売は、売却して得られた金銭を債権者で分配することを目的として実行されます。このため、このような集落にある土地や戸建住宅でも平然と売却されます。その際に、私道所有者による通行許可が得られるか否かを問題にすることはありません。

現況調査報告書に私道所有者の陳述内容として「競売の買受人が私道の通行を希望しても、通行を認めることはありません。」とか「私道の廃止を検討しています。買受人が通行することはできません。」等と記載されていることがあります。このような記載がある場合は、多くの場合に入札を控えるのが賢明です。

このような物件を競落した際は、私道所有者に私道の通行権を認めてもらうために裁判を提起しなければならないことがあります。裁判の結果、通行権が認められた場合でも通行料や維持費を支払わなければならないことがほとんどです。