年末以降、不動産は買いやすくなるか

ご承知の通り、新型コロナウイルス禍がなかなか収束しません。
よく尋ねられるのが、今後は不動産を買いやすくなるかということです。

基準地価の動向

最近、基準地価(全国の全用途平均、2020年7月1日現在)が3年ぶりに下がったという報道がありました。都心(山手線の内側)および地方都市は値下がりし、都心に近い郊外ではやや上昇している状況です。

都心のオフィスビルにおける賃料はかなり高額です。コロナウイルス禍のために事務所賃料の支払いが難しくなった会社は都心における営業を諦め、事務所を都心から郊外に移転しています。
外出の自粛、および外国人観光客がほとんどいなくなったことから、商業施設の活気はなかなか元に戻りません。特に、飲食店は壊滅的な打撃を受けています。都心の商業地では、土地の需要が激減しています。

物流に対する需要が激増しているため、高速道路近くの土地にはロジスティックセンターなどの建設需要が生じています。都心に近い郊外で基準地価が微増した原因は、ロジスティックセンターなどの建設需要が発生したことが主因であると思われます。

安値で販売される住宅は増えるが、住宅ローンを利用できない物件が多い

新型コロナウイルス禍が急に収まる気配はないため、遊休地や郊外の会社保養施設を売却し、会社の運転資金に充当したり、事業用ローンの返済に充てる企業が増えています。今後は、企業の倒産や廃業の増大が懸念されます。

問題は雇用です。住宅ローンを利用して自宅を購入した方の勤め先が倒産または廃業すると解雇されてしまいます。解雇されない場合でも賃金やボーナスカットになる方の急増が想定されます。
その結果、住宅ローンの返済が滞ると金融機関から自宅を差し押さえられてしまいます。任意売却または競売により換価されますが、その際の売却価格は市場価格よりかなり安くなると思われます。結果として、安くなった不動産が市場に多く出回るようになると思われます。

この流れから考えると、これから住宅の購入を検討している方には朗報と思われるかもしれません。しかし、任意売却や競売で売り出される不動産に対し、金融機関が住宅ローンの利用を認めることはほとんどありません。現状有姿による販売になることが大半であるからです。

安値の不動産は資金力がある不動産会社が買い取り、市場流通価格で再販される

任意売却、または競売で売却される不動産を購入できるのは、現金一括で購入でき、多少の瑕疵があっても自己解決できるところに限られます。具体的には、資金力がある不動産会社です。

このような不動産会社は、物件における瑕疵を解決してから再販します。再販の価格は概ね市場流通価格になります。一般の方が安く買えることはありません。

ちなみに、不動産会社が一旦買い取り、必要な修復を行った後に再販する不動産であれば、住宅ローンによる融資を認める金融機関が大半です。

買い替え需要が激減しているため、一般の流通ルートで販売される不動産の数も激減

新型コロナウイルス禍は、不動産の買い替え需要を激減させました。経済活動が順調であれば、自分が住んでいる住宅のグレードアップを考える方が増えます。より広い住宅に買い替えるとか、郊外に住まわれている方は交通の便が良いところを探す等を検討します。

しかし、勤め先が危機的状況に陥り、いつ自分が解雇されるかわからないという不安を感じる方が増えています。このような方は、貯金を取り崩して不動産を買い替えるより、現在住んでいる住宅で我慢することを選択されます。

新しい物件は、住宅が買い替えられる際に誕生します。しかし、買い替え需要が激減しているため、供給される物件の数が極端に少なくなっています。

任意売却や競売ではない、一般的な流通ルートに供給される不動産の数は激減しています。この傾向はしばらく続くと思われます。

今後は、金融機関の融資条件が厳しくなる

残念ながら、今後は倒産や廃業に追い込まれる企業の続出が想定されます。金融機関が貸付金を回収できなくなり、金融機関の経営状況が悪化します。既に、地方銀行の再編を促進する政策を進めることが報道されています。

住宅ローンの審査は、日を追う毎に厳しくなることが想定されます。今後は現在の収入や家庭環境、資産状況だけではなく、勤め先の企業業績も加味した審査になると思われます。

だからといって、住宅ローンの利用を検討されている方が住宅の購入を急ぐことはお止めください。無理をして急いで購入した後に無収入になると住宅ローンを返済できなくなり、大変な目に遭います。

まとめ

ローンを利用して住宅を購入する場合は、残念ながら不動産を買いやすくなるとは思えません。売却される不動産の総数が増えても住宅ローンを利用できない不動産が多く、金融機関の審査も厳しくなるからです。

現金一括で購入される方は、信用できる不動産会社の助言を得ながら購入されることをお勧めします。一般の流通ルートで購入できる不動産の数は、残念ながら少ない状況です。この傾向は当分の間、続くと思われます。

新型コロナウイルス禍の早い収束を願うばかりです。