日本では不動産売買にオークションが根付かないわけ

以前、不動産売買をオークションで行うという「マザーズオークション」が盛んにテレビCM等で宣伝されました。著名な芸能人をCMに登場させ、派手な宣伝を行っていたことを記憶されている方は多いと思います。

また、大手の不動産会社が共同で不動産オークションを開始し、海外のオークション会社も参入してきました。「不動産は今後、オークションで売買されることが一般的になるかもしれない。」と思える状況になりましたが、実際にはほとんど根付いていません。現在は、一部の団体のみが不動産オークションを開催しています。

不動産売買において、オークションが根付かなかった理由
1.オークションに集まる買い手は安く買えることを期待しているため、買い手が有利になる
オークションにかければ公正な価格による売買が成立しそうな印象を抱く方が多いかもしれませんが、競りによる売買では、どうしても買い手が有利になります。その良い例が、裁判所が開催する「不動産競売」です。

「不動産競売」では市場流通価格よりも安く買える可能性があることから、多くの不動産会社が買い手として入札します。市場流通価格よりも高い価格で売却が成立することがたまにありますが、その不動産の稀少性が極めて高く、購入を希望する買い手がかなり多い場合に限られます。通常の不動産では、そのような高値で落札されることはほとんどありません。市場流通価格の半値以下で落札されることがあります。

売主が最低売却価格を設定しても、この価格では取引が成立しないこともあります。

2.物件に関する詳細な情報を、入札前に得ることが難しい
通常の不動産取引では、購入希望者から売主側の不動産会社に対し、目的不動産における瑕疵の有無、隣地との境界争いの有無、前面道路が私道の場合には車両の通行が出来るか等について質問し、回答を得ることが出来ます。

回答する情報の中には個人情報が含まれます。このため、売主および売主側の不動産会社は、不動産を購入してもらえる可能性が高い場合に限り情報を開示します。入札を検討しているだけの方には、情報を満足に開示できないことがあります。物件に関する詳細な情報を、入札前に得ることは困難です。

3.融資を引き出すことが難しく、現金一括で購入できる方しか入札できない
購入希望者が金融機関に対し「○○の不動産を○○円で入札しますので、融資してください。」とお願いしても、依頼者が確実に購入できるとは限らないことからほとんどの金融機関は融資を引き受けません。

非常に少ないと思いますが、融資してくれる金融機関があっても落札後でなければ対応しませんし、必ず融資してくれるとは限りません。

手持ちの現金がない方が融資を受けることを前提として落札したものの、融資を受けられなければ、この落札者は違約金を請求されます。このため、「融資を受けられなければ購入できない」という方は入札を控えることになり、不動産の代金を現金一括で支払える方だけが入札することになります。

4.オークションを主催する会社の収入源を、どこに求めるか
オークションが成立した際には、売主は不動産会社を通じて落札者との間の売買契約を締結します。売主側の不動産会社としては、売主および買主の両方から仲介手数料を受領したくなりますが、オークションの主催会社が買主側の不動産会社として介在すると、売主側の不動産会社は「片手」の手数料しか受け取れません(片手取引)。これでは売主側の不動産会社はオークションによる売却に対し、及び腰になります。

そうかといって、売主側の不動産会社による両手取引を認めると、オークションを主催する会社はどこから収入を得れば良いのかという問題が生じます。

不動産会社から「月会費」等で徴収することが考えられますが、いつ利用するかわからない売却手段のために会費を負担する不動産会社は非常に少ないと思います。

また、利用の都度、利用者から費用を徴収するとしても、利用者は不動産会社に支払う仲介手数料の他にオークション利用料を支払う必要があります。当然、利用者は不動産会社に仲介手数料の値引きを求めます。しかし、不動産会社には仲介手数料の値引きに応じてまでオークションを勧めるメリットはありません。

まとめ
不動産を購入したい方が爆発的に増える状態になれば、不動産オークションが活発に行われ、主催する団体や会社が増えると思います。しかし、現在のコロナ禍はしばらく続きそうです。企業の倒産や廃業が増える気配があることから都心の収益用不動産を除き、不動産の購入を検討する方が少ない状況が続くと思われます。

不動産の購入希望者が急増することは考えにくいため、不動産売買においてオークションが根付くことは、当面はないと考えられます。