新たに賃貸経営を始めるオーナー様へ

新型コロナウイルス感染症の拡大が止まらないことから本来の生業を縮小し、収益用不動産を購入して賃貸経営を始める投資家の方が増えています。

収益用不動産を初めて購入するオーナーが見落としやすい項目がいくつかあります。
今日はこれらを指摘します。

1.表面利回りと実質利回り
実質利回りが低い不動産をローンで購入してはいけない

両者の区別がわからない方がいらっしゃいます。物件紹介資料に記載されている利回りは「表面利回り」であることが大半です。

表面利回りとは、1年間に受け取れる家賃・共益費の総額を購入価格で割り、100倍してパーセント表記したものです。実質利回りとは、1年間に受け取れる家賃・共益費の総額から固定資産税、都市計画税、保険料、年間の想定維持費等を差し引き、この金額を購入価格で割り、100倍してパーセント表記したものです。

金融機関から融資を受けて収益用不動産を購入する際は、その融資は「事業用ローン」となりますので、利率は3~5%になることが多いです。

利率3%の事業用ローンを利用し、実質利回りが4%の物件を購入したらどうなるでしょうか。単純計算ですが、購入費の全額について融資を受けた場合には差し引き1%の利回りしか得られないことになります。例えば3億円の物件を購入した場合には年間300万円の利益しか得られず、さらにここから法人税または所得税を支払うことになります。これでは目も当てられません。

表面利回りが6~7%程度の物件でも、実質利回りが4%程度しかない物件は多くあります。

2.想定している家賃が適正か
地域相場の5割増しの家賃を想定家賃にしている物件があります。特に、新築の物件では要注意です。新築でも相場の1.5倍の賃料ではほとんど誰も入居しません。賃料が相場の1.5倍であるにもかかわらず満室である物件があれば、その物件にはいわゆる「サクラ」が入居している可能性が高いです。

この「サクラ」ですが、悪徳業者が満室稼働であることを見せかけるために入居させます。このような賃貸マンションでは購入後1~3か月を過ぎたあたりから次々に退去し、空室だらけになります。決して購入してはいけません。

残念ながら、このような行為を行う悪徳建築会社は現にいくつか存在します。

3.建物の減価償却費
新築または築浅の物件では、減価償却費が多額です。購入当初は気にならないのですが、数年後に家賃を下げなければならない状況になると、多額の減価償却費のために収支が毎年赤字という悲惨な状況になります。

4.家賃滞納者の確認が必要
この情報は、レントロールに反映されていないことがよくあります。家賃を滞納している入居者がいる場合はその戸数と滞納金額を調査しておく必要があります。

言わずもがなですが、滞納者が多い物件の購入はお勧めしません。家賃を滞納している者を退去させることは決して容易ではありません。

5.都市計画、区画整理、再開発が行われるかについての確認が必要
前面道路拡幅、区画整理、地区計画、再開発等の計画がある場所に立地する収益用不動産を購入する際は要注意です。

公共工事により不動産が収用される場合、土地は公示地価で収用されます。地価が高額な地域では、市場流通価格よりもかなり安い価格で収用されることになります。差額を「損失」として受忍できる金額かを検討しておく必要があります。一番良いのは、そのような場所に立地する収益不動産を購入しないことです。

6.サブリース契約を締結するか
サブリース契約の締結を勧める不動産会社が多いです。その理由は、サブリース形式で貸し出される不動産では年間の家賃収入が約束されていることから、融資を受ける為の審査を通過しやすいことがあります。

サブリース契約を締結すると、管理の手間から解放されます。本業が多忙な方においてはとても便利です。しかし、サブリース契約では全収入の8割程度しかオーナーに入金しません。

収益用不動産の売買では利回りを基準とした値付けが行われます。サブリース契約を締結している収益用不動産は、オーナーに入金する金額が低いことから高く売却することが非常に困難です。

将来的に物件を売却し、他の物件を購入することを検討される方は、サブリース契約を締結しないのが得策です。

7.管理を委託する際は管理会社の評判に注意
管理会社に管理を委託する際には、どのような管理が行われるかについて注意する必要があります。良くあるのは定期的な巡回や清掃をサボるとか、家賃の送金が遅れるというものです。口コミや評判に注意する必要があります。