コロナ禍の中で、収益用不動産の購入を検討されている方へ(その3)

※昨日の投稿の続きです。

レントロール、家賃滞納者の状況などに注意
 コロナ禍が継続していることから、レントロールおよび家賃滞納者に対する注意は欠かせません。

 レントロールとは各部屋の賃料、賃借人の入居時期と次回契約時期、賃借人の氏名および年齢を一覧形式で記載した書類のことです。なお、入居者の氏名および生年月日については、契約の締結がほぼ確実であるか、機密保持契約を締結していることが公開の条件とされる物件があります。

 問題なのは、家賃滞納者の存在です。特に現在はコロナ禍です。勤務先を解雇され、家賃を滞納している方が入居している物件があります。家賃滞納の状況については、購入希望者から尋ねないと教えてもらえない物件がたまにありますので要注意です。

 「家賃を滞納している賃借人は追い出せば良い」とお考えの方がいらっしゃると思いますが、借地借家法の規定により賃貸人が賃貸借契約を解約して賃借人を退去させるためには厳格な要件(信頼関係破壊の法理)があります。

 家賃を滞納している賃借人が居座り、退去に応じない場合は裁判所に明け渡し請求の裁判を提訴し、最終的には強制執行を行ってもらうことになりますが、1年前後の期間を要する上にその期間の家賃収入はありません。また、強制執行迄行う場合には数十万円~100万円程度の費用が発生します。

 不動産業者ではない投資家の方は、家賃滞納者が入居している物件の購入は控えることをお勧めします。このような物件は、不動産会社でないと対応が困難です。

入居者に関する情報を確認する
 賃借人が入居する際に締結した賃貸借契約書の参照は必須です。収益用不動産を購入した場合、全ての賃貸借契約を引き継ぐことになりますので、その内容を確認する必要があります。

 注意したいのは、賃貸保証会社による家賃保証契約締結の有無、および連帯保証人の有無です。

 普通賃貸借契約が締結されている場合において、家賃保証契約が締結されておらず連帯保証人による連帯保証契約のみである場合は、賃貸借契約の更新時に連帯保証人に対し、連帯保証の極度額を告知する必要があります。これは令和2年4月に施行された改正民法によるものです。

 しかし、この極度額は家賃の2年分に相当する金額です。連帯保証人の中には「極度額が高すぎることから連帯保証契約の更新を拒否する」と言われることがあります。このような事態になると、連帯保証人が存在しない状態で賃貸借契約を更新しなければならなくなります。これでは、家賃が滞納された場合に代位弁済を受ける手立てがなくなります。

 最終的に賃貸保証会社による家賃保証契約を締結してもらうにしても、入居者の中には家賃保証契約に必要な保証料の支出を拒む方が出て来ることがよくあり、説明は一苦労です。そればかりか、賃貸保証会社が入居者の属性を理由として家賃保証契約の引き受けを拒むことがあります。このような事がおこると厄介です。

 このため、家賃保証契約が締結されておらず、連帯保証人による連帯保証契約のみの部屋が多い収益用不動産は、購入を控えるのが賢明かもしれません。