家賃を滞納し続けるとどうなるのか(対応により逮捕される?)

2021年3月15日

改正民法の施行と連帯保証
昨年(令和2年)4月に改正民法が施行されました。これにより賃貸借契約を新たに締結する際、または更新をする際には連帯保証人になられる方に極度額を告知し、その旨を賃貸借契約書および連帯保証人引き受け承諾書に記載しなければならなくなりました。さらに、事業用物件を借りる場合は、公正証書(保証意思宣明公正証書)の作成が必要になりました。

実務上、極度額は2年分の家賃および共益費の合計額となります。例えば家賃8万円、共益費5千円の物件では、二年分の合計額は204万円になります。これだけの金額を請求される可能性があるということを、保証契約締結前に、予め連帯保証人を引き受ける方に告知することが必要になりました。

この金額を告知された場合、多くの方は尻込みをされると思います。民法が改正されたことから、例えば単身者用住宅を借りたい友人同士が、お互いに連帯保証人になる行為は困難になりました。

改正民法は、連帯保証人を立てるのではなく、家賃保証会社との間に保証契約と締結させることを狙っていると言えます。今後、賃貸借契約が締結される際には家賃保証会社を利用することが一般的になると思います。

家賃を滞納するとどうなるか-連帯保証人に対する請求
連帯保証人がいる状況で家賃を滞納された場合は、連帯保証人に家賃が請求されます。この場合、家賃相当額および遅延損害金(法定利率による利息)の支払を求められます。

家賃保証会社との間に保証契約が締結されている状況で家賃を滞納した場合
賃借人が家賃保証会社との間に家賃保証契約を締結している場合は、家賃保証会社が賃借人に対し、家賃の支払いを催促します。メール、電話だけではなく、訪問して督促する場合もあります。

催促しても家賃が支払われない場合は、家賃保証会社はオーナーに対し家賃及び共益費の合計額を代位弁済します。つまり、家賃保証会社が家賃を立て替えてオーナーに支払います。その際に、指定情報信用機関に家賃滞納の事実が登録されます。これが行われると、クレジットカードの利用が制限される、新しい賃貸住宅に転居する際に家賃保証会社を利用したくても利用できない等の制約を受けることになります。

代位弁済が行われた後、家賃保証会社は求償権を行使します。さらにオーナーは賃貸借契約を解約します。賃借人が明け渡しに応じない場合は、明け渡しを求める裁判が提起され、オーナーに明け渡すように命ずる判決が得られ次第、強制執行の手続きに入り、最終的には賃貸物件から強制的に排除されることになります。

未払い賃料などは退去後も請求される-財産開示の申し立て
未払賃料、共益費、原状回復費等は、自主的に退去したか裁判手続きにより退去したかによらず、家賃保証会社から引き続き請求されることになります。

家賃保証会社は、未払い賃料等の支払を求める裁判を提起します。その際に、元賃借人は財産の開示を求められることになります。財産の開示に応じない場合、家賃保証会社は裁判所に財産開示の申し立てをすることがあります。

差押えの対象は銀行預金口座、有価証券、所有する自家用車等になりますが、どれくらいの財産があるのかが不明の状態では差押えの対象を決められず、強制的な回収を行えません。このため、財産の開示を求めることになります。

従来より、財産開示請求に関する手続きは民事執行法に定められています。家賃保証会社(債権者)による財産開示の申し立てが正当であると裁判所が判断した場合は財産開示の実施決定が行われ、財産開示実施決定正本が送達されます。裁判所が債務者(元賃借人)の財産状況を確認するために、裁判所へ出頭するように求められます。

しかし、出頭期日(財産開示日)に出頭しない、または虚偽の陳述をした場合でも30万円の過料を科す規定しかなかったため、出頭期日に出頭しない債務者(元賃借人)が多く、債権者(家賃保証会社)の中には強制的な回収を諦める事案がありました。滞納家賃が高額な場合、過料を支払えばそれだけで済むと考え、出頭しない者が多くいました。

令和2年4月に改正民事執行法が執行されました。出頭期日(財産開示日)に出頭しない、または虚偽の陳述をした場合には6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金刑が科されるようになりました。つまり、違反すると逮捕されて「刑事罰」が課されることがあります。

令和3年3月5日に、16万円の家賃滞納を原因とした財産開示の請求に関し、裁判所が定めた出頭期日に出頭しなかった方が警視庁に書類送検されたとのことです。

関連記事はこちらです。<※2021年3月15日追記:掲載社の都合により、元記事が削除されました。>

初めての「摘発」とのことですが、家賃滞納の代償はかなり大きなものになります。「逃げ得」は許されない時代になったと言えます。家賃を滞納した状況を放置し、裁判所による財産開示請求を拒否すると逮捕され、懲役刑や罰金刑を申し渡されることがあるという世の中になりました。