不動産競売、公売で購入した土地に収益用不動産を建設する場合

 最近、東京の都心部における収益物件、特に賃貸アパート・賃貸マンションの1棟ものの価格が急上昇しています。

 コロナ禍であることから所有する収益物件の買い替えを検討する投資家が激減しており、さらに新たに賃貸不動産経営を開始する企業が増えているからです。

 特に駅至近の立地で、築20年程度の物件における価格が暴騰しており、表面利回り4~5%程度の物件が増えています。表面利回り4~5%の物件における実質利回りは概ね2.5~3.5%程度にしかなりません。この利回りであれば、証券会社が販売している投資信託を購入する方が得かもしれません。

 収益物件の売り物件が激減していることから価格が暴騰している中で、購入価格を少しでも抑えたいということから裁判所か開催する「不動産競売」や地方自治体が開催する「公売」を利用して土地を購入し、建物を新築することをお考えになる投資家が増えています。

 しかし、問題点がありますので説明します。

不動産競売、公売で売られている土地の問題
1.土地は、いわゆる「現状有姿」による引渡しになる
 土地に何らかの瑕疵がある場合でも、誰も責任を取らない条件による引渡しになります。例えば土壌汚染が見つかった、軟弱地盤である、以前に建っていた建物の杭が引き抜けない状態で残っているために新たな杭を打つ際に支障をきたす等です。

 土地の一部に傾斜している箇所があり、建物を建設するためには擁壁を構築しなければならない土地があります。この場合は予期しない多額の擁壁構築費用を要します。

 傾斜箇所の存在は、特に古家が建っている土地の場合に見過ごされやすい点です。「古家があるから大丈夫」と考えてしまう方が多いのですが、古家を取り壊して新たに建物を建築する場合には擁壁を構築をしないと建物の建築確認申請が認められないことがよくあります。

 また、売却対象とされる土地に建物を建設することが法的に許容されていないことがあります。例えば道路から土地に入るためには他人の土地を通らなければならない土地、いわゆる旗竿地で旗竿部分における幅員が2メートルに満たない土地の場合は建物の建設が認められません。さらに、地域の条例により自宅の建設は可能であるものの、集合住宅の建設は許可されない土地があります。

 以上の内容は不動産競売及び公売における現況調査報告書に記載されていないことがよくありますので、入札する際には事前の調査が必須です。市区町村役場の建築担当部署への確認が必要です。

2.明け渡しがスムーズに進まないことが多い
 不動産競売や公売にかけられて安く売られたという事に納得できない方が、嫌がらせ目的で土地に廃車や建設残土等を積み上げることがあります。土地を購入した方といえども、廃車や残土を勝手に取り除くことは出来ません。土地の購入者には廃車や残土の所有権がないからです。

 土地上に古家がある物件の場合、明け渡しを求めても退去に応じず、居座る場合がよくあります。どうしても明け渡しに応じない場合、不動産競売では裁判所の強制執行を申し立てることにより占有を解除して退去させることが可能ですが、公売の場合は明け渡し請求の裁判を提起する必要があることから退去までにはかなりの日数を要します。1年以上を要することがよくあります。

3.土地に対し、事業用ローンを利用できないことが多い
 不動産競売または公売で購入する不動産については瑕疵の有無および内容がわからないことから、事業用ローンによる融資に応じない金融機関が多いです。ノンバンクの中には立地が良好な物件に限り、融資に応じるところがあります。しかし、利息がかなり高いことから、融資の利用は現実的ではありません。

 このため、土地については現金一括による購入を前提として考えておく必要があります。

4.前面道路が私道の場合、掘削許可や車両の通行許可を得られないことがある
 掘削許可を得られないと、都市ガスを利用できないことになります。また、車両の通行が認められないと、ゴミ収集車が入れないことからゴミ収集をどのように行うのかが問題になります。

建物を新築することによる問題
1.新築建物であることから建物の固定資産税および都市計画税が高額になる
 特に説明は不要かと思います。 

2.満室稼働をさせるのに日数を要する
 春先の繁忙期でないと、空室が埋まるのには相応の日数を要します。