緊急事態宣言の発出が長期化した場合、不動産市況はどうなるか

不動産業に携わる者として、緊急事態宣言が再び発出されることを恐れていたのですが、現実になりました。

リーマンショックの際も問合せや来客の数が激減しましたが、今回はそれ以上です。感染症の拡大を止めるために発出されるわけですから仕方ないかもしれません。しかし、緊急事態宣言の発出が長期化すると、不動産市況に対し、大きな悪影響を与えます。

最も大変な目に遭うのは賃貸物件のオーナーかもしれません
緊急事態宣言の発出が長期化すると企業の倒産や廃業が増え、従業員が解雇されます。そこまでいかない場合でも賃金カットが行われます。家賃を滞納する賃借人が増えることから、賃貸物件のオーナーは賃料収入を得られなくなります。

困るのは賃料を滞納する賃借人の取り扱いです。家賃を滞納したまま何としても賃料を支払わず、退去の話し合いにも応じない賃借人に対しては裁判を提起することにより賃貸借契約の解約を認めてもらい、それでもなお退去しない場合は強制執行まで行い、退去してもらうのが通常です。しかし、昨年の緊急事態宣言発出後から裁判所の裁判手続きが大幅に遅延しており、このような賃借人を早期に退去させることは難しくなっています。

家賃を滞納し、しかも退去に応じない賃借人が増えると、事業用ローンを利用して賃貸アパートまたは賃貸マンションを購入したオーナーはローンの返済が出来なくなります。最悪の場合、任意売却または競売で賃貸アパートや賃貸マンションを売却することになります。残債が残り、返済の見通しが立たない場合は破産宣告を受けることになります。

賃貸物件のオーナーにおいては、別の問題もあります。室内自殺の増加です。勤め先が廃業または倒産したことから解雇されると、なかなか再就職できない社会情勢です。このため、室内自殺をしてしまう方が増えています。室内で自殺が発生すると心理的瑕疵のある事故物件と見做されることから、資産価値は大きく下落します。

住宅ローン審査の厳格化
今後、新しく住宅を購入する際のローン審査は厳しくなります。現在の勤め先や収入だけではなく、貸出金額と担保不動産の価値とが釣り合うかが厳しく精査されます。

「住宅ローンの利用はできますが、頭金を増やしてください。購入価格の2割は自己資金でお願いします。」と伝えられることが一般的になるかもしれません。諸費用を含めた融資はもちろん、不動産物件の代金のみであっても全額の融資に応じてもらえなくなると考えておいた方が良いかもしれません。

住宅が建設されると、そこには新しい世帯が誕生し、そこでは家財、自動車の購入などの消費活動が活発に行われます。しかし、金融機関が住宅ローンの貸し渋りを行うと、住宅の需要が減ることから家財や自動車等の購入が低迷し、景気悪化を招きます。

不動産会社の倒産、廃業が増える
緊急事態宣言の発出が長期化すると、賃貸、売買物件のいずれも動かなくなります。仲介手数料が激減することから倒産または廃業するところが増えると思われます。