「自分のお小遣い」を要求する不動産会社の営業担当に注意

新年が明け、松の内が過ぎました。不動産賃貸、不動産売買ともに繁忙期に入ります。質の良くない営業担当に関する相談を受けるのもこの時期です。

私の友人が、都心にソシアルビルを所有しています。このビルに入居していた会社事務所の一室が退去しました。新たな入居希望者を探して欲しいということで、店舗事務所の賃貸に強いという口コミがあるA不動産に客付けを依頼しました。

A不動産の営業担当が友人の事務所に出向きました。その際に、以下の内容を承諾して欲しいと言われたとのことです。

Ⅰ.成約した際に、仲介手数料として1か月分の賃料相当額をもらいたい。
Ⅱ.その他に、自分の会社に賃料1か月分の販売手数料をもらいたい。
Ⅲ.さらに、自分に対する報酬として賃料1か月分をもらいたい。これについては領収書を渡せない。

Ⅰについては、宅地建物取引業法によりオーナーの同意があれば収受することができます。不動産業者が受け取れる仲介手数料は賃料0.5か月分(税別)ですが、相手方の同意があれば1か月分(税別)までもらうことができます。

Ⅱについても、オーナーが特別な広告を作成させた、特別な活動を行わせた等の場合には、不動産会社は実費の範囲で請求することが認められています。しかし、契約前に予め金額を決め、成約した際にその金額を受け取るというのはグレーゾーンでしょう。

仮にこのような行為が行われたとしても依頼者が納得しており、税務の面において問題のない処理が行われているのであれば、大きな問題にはならないと思います。特に地方ではお客様の案内にかなりの時間を要し、さらに多額のガソリン代が発生します。仲介手数料だけでは経営が成り立たない地域があるのは事実です。

問題はⅢです。一体、何を考えているのかと思います。

このような形で報酬を受領する行為は無免許営業に該当します。件の営業担当が勤めるA不動産が宅地建物取引業の免許を保有しているのは当然ですが、このような場合でも営業担当が免許を保有しているわけではありません。

不動産業を無免許で営業する行為は宅地建物取引業法違反です。宅地建物取引業法第12条第1項及び第79条第1項第2号により、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられ、併科されることもあります。

警察に通報された場合には逮捕され、立件される可能性が高いことから、不動産会社としてはこのような行為を容認できません。勤め先のA不動産が知った場合には、この営業担当はかなりの確率で解雇されると思われます。

営業担当が「自分のお小遣い」を要求する事案はかなり多いようです。

このブログをお読みのオーナー様において「自分のお小遣い」を要求する営業担当に遭遇した場合は、その会社とは縁を切ることをお勧めします。

営業担当を変えてもらうだけでは甘いです。営業担当に遵法精神が全くないということは、勤め先の不動産会社には社員を指導監督する能力が無いと言えるからです。大手でも例外ではありません。

私の友人には、依頼先の不動産会社を変えることをお勧めしました。不動産取引におけるトラブルは、このような会社に依頼した際に多く発生すると言えます。