売買物件のオンライン内見における問題

 新型コロナウイルス感染症がなかなか終息しないことから、不動産物件の内見をオンラインで実施して欲しいという要望が寄せられます。

 現在、賃貸物件は、内見だけではなく重要事項説明および契約締結もオンラインで実施できることになりました。ただし、重要事項説明および賃貸借契約書などの書類を事前に郵送することが必要とされています。

 不動産売買も、賃貸物件の場合と同様にオンラインによる内見が可能です。2021年4月より、国土交通省が定める「IT重説実施マニュアル」に基づいて運用することを前提として、オンラインによる重要事項説明および契約締結が認められるようになりました。

 このため、不動産売買においても内見、重要事項説明、売買契約締結、決済までの全てを非対面で行いたいという方がいらっしゃると思います。

 本日は、売買不動産に対する内見をオンラインで行った場合において、オンライン内見ではわからなかった不満な点が出てきた場合について書きます。

売買物件をオンラインで内見し、購入した場合における問題
 入居している賃貸物件に気にいらないところがある場合は、転居に費用が発生するものの他の物件への引越は容易です。しかし、売買物件の場合は極めて困難です。

 物件の購入後、入居を開始してから「いくつか不満な点がある。オンライン内見の際にはわからなかった。売買契約を取り消したい。」と主張しても、その不満な点が「瑕疵」と言えるものであり、売主に契約不適合責任を追及でき、しかも解約のための要件を満たしていなければ、売買契約の解約は極めて困難です。

 「瑕疵がある」と言えるための要件ですが、売買の目的となる物件に雨漏りやシロアリによる被害、故障した設備(湯沸かし器など)などがあるにもかかわらず当該物件が買主に引き渡され、修理をしなければ物件を利用できないと認められる場合等が該当します。

 売買の目的である不動産に何らかの「瑕疵」がある場合、買主は契約不適合責任に基づく追完請求(不具合のある箇所を修理する)、または代金減額請求が可能です。しかし、買主側から売買契約を解除できるのは売主がこれらの追完請求や代金減額請求に応じない場合に限られ、「不満な点がある」としても「物件の瑕疵」と言えなければ、売買契約の解除および損害賠償の請求は認められません。

 例えば、部屋の中が臭う、浴槽からの排水に時間がかかる、眺望が気にいらない、上階の音がうるさい(マンションの場合)、エアコンの効きが良くない、湯沸かし器の音がうるさい、コンセントの数が少ない、壁クロスが薄汚れている、等の問題がある物件がよくあります。

 しかし、これらの多くは「不満」であり、契約不適合責任を追及できる迄には至らない内容が多いと思われます。設備が故障していることから稼働しない等の場合は契約不適合責任における追完請求(修補請求)による対応を求めることが可能です。排水管の問題については高圧洗浄をするように求めることは可能だと思われます。しかし、その他の「不満」に対し、契約不適合責任が認められることはまずありません。

 それに、住宅ローンを利用して購入した物件における売買契約を解約する場合は、金融機関との相談が必要です。

 時間を節約したいことは理解しますが、気に入った物件が見つかり、最終的な判断をする際には必ず物件を実際に訪問し、実際に自分の目で物件を内見することを強くお勧めします。

 物件に赴き、自分が直接感じた内容の中で「不満な点」があるものの、その「不満な点」が許容範囲内に留まるのであれば、契約前に行う価格交渉(値引き交渉)の材料として利用できることがあります。この点からも、内見をオンラインのみで済ませることは得策ではないと思います。