無茶振りと言える不動産購入希望者の要望には応じないのが賢明(売主様向け、買主様も参考になります)

 土地、中古戸建住宅、中古区分マンション等の自己居住用の居宅、1棟アパートや1棟マンション等の収益用不動産のいずれにおいても、購入希望者からたまに「無茶振り」と言える要求をされることがあります。

 「購入したいので買付証明書を提出しますが、要望があります。」と言われますが、売主様のことを全く考えない、とてもワガママな要望であることがよくあります。 

 以下、無茶振りの例を書きます。全て筆者、または筆者の会社が「売主側業者」として売買仲介をした際に筆者または売主様が過去に言われた事例です。

無茶振りの例

・築浅の中古戸建住宅、中古区分マンションにおいて、「売主の費用負担でユニットバス、システムキッチン、洗面化粧台の全てを新品に交換してもらいたい。」と要望。理由は単に「他人が使用していたものは嫌。」というもの。 ユニットバス、システムキッチン、洗面化粧台における汚れ、傷、不具合がほとんどないことを内見で確認しているのに新品交換を要望。

・さらに「ユニットバス、システムキッチンの新品交換を先に行ってもらい、交換後の状態を見てから契約するか否かを決めたい。」と要望。
(→ 購入希望者は一人だけではありません。それに「他人が使用していたものが嫌」であれば、新築物件を購入するべきです。)

・中古戸建住宅において、「改築(2部屋をつなげて一室にする)して早く入居したい。工務店におけるスケジュール上の理由により、契約前ではあるが工事を始めたい。住宅ローンの成否は未定であり、手付金の授受も行っていないが、今すぐに鍵を渡して欲しい。」と要望。
(→ 住宅ローンが不成立になった場合、既に工事を行った部分についてはどのように対応するのでしょうか。)

・「いわゆる旗竿地(敷地延長型土地)の売買において、旗竿における竿の部分(通路部分)の幅が狭いので、これを広げてくれたら購入する。隣地から幅1~2m程度の土地を購入できるように隣地の所有者に働きかけて欲しい。測量費用および追加で購入する土地の購入費用は売主負担にして欲しい。それが出来なければ購入しない。」と要望。
(→ 隣地の住宅が住宅ローンの返済中であれば100%確実に売却不可。それ以外でも認められることは皆無に近い。)

・(中古戸建住宅において)「10年程度使用したら再建築すると思うが、その際におけるイメージが湧かないので想定パースを見せて欲しい。」と要望。

・(1棟ものの収益マンションにおいて)「部屋をだらしなく使用している物件は嫌なので、賃貸中の部屋を含め、全ての部屋について室内を見たい。全ての部屋における室内を確認できないなら購入しない。」と主張。
(→ 賃貸中の部屋は内見禁止なので、この方が購入できる物件は存在しません。)

・「売主には契約不適合責任がある。エアコン、給湯器、システムキッチン、その他全ての室内設備について、購入後2年以内に不具合が発生した場合、全て売主の負担で修理または新品購入してもらいたい。」と要望。
(→ 契約不適合責任の意味を勘違いしている。)

・「住宅ローンを利用して購入したいが、現状では売買価格の8割程度しか融資してくれない見込みである。売買価格の全額を借りたいので、物件価格を見かけ上2割上乗せすることに協力して欲しい。このため、金融機関に提出する売買契約書に記載する売買金額を、売主様にお渡しする売買契約書に記載する売買金額の2割増しにしたい。売買契約書に記載する物件価格が異なるが、この点について了解してもらいたい。」と要望。
(→いわゆる「書き上げ」です。売主様を詐欺罪および有印私文書偽造・行使罪の共犯に仕立てる行為です。)

・取引関係者の全員が集合している契約、または決済の場において、物件価格の大幅な値引きを売主に迫る。

・(収益用戸建住宅の購入に際し)「隣の家(所有者は異なる)も購入したいので、売主から売ってくれるように働きかけて欲しい。2軒同時に購入できないなら購入しない。」と要望。

・(賃貸中の収益用不動産において)「現状では入居者が支払う家賃が安いので利回りが低い。購入価格は売主が希望している価格(物件概要書記載の金額)で構わないが、全ての部屋の入居者を退去させ、リフォーム後に高めの家賃で新たな入居者を募集し、満室にして欲しい。満室になった時点で契約する。退去にかかる費用とリフォーム代、新たな入居者を募集する費用は全額を売主に負担して欲しい。」と要望。
(→ 購入希望者は一人だけではありません。)

・「手付金の金額を物件価格の2%、できれば1%にして欲しい。」と要望。
(→通常は5%~10%です。1~2%では手付金の意味がありません。)

 受け入れられない内容の要求をしていることがすぐにわかりそうな事案ばかりだと思います。不動産の購入を検討されている方におかれては、反面教師にしていただければ幸いです。

 売主様におかれては、無茶振りを要求する購入希望者の要望に対応する必要はないと思います。仮に購入希望者の要望に応じても、このような購入希望者は契約の直前になるとさらに別の無茶振りを要求してくることが多いです。また、物件の引き渡し後も色々と難癖を付けてくることが多いので、売却後もストレスが溜まります。

 購入希望者の要望が無茶振りであると感じたら要望を受け入れられない旨を伝えることになります。それでもなお「要望を受け入れないなら購入しない。」と言われた場合は「申し訳ありませんが、貴殿には売却致しかねます。」と告げて売却をお断りすることが賢明なことが多いです。