再建築不可の物件とは知らずに購入することを避けるための注意点

 このブログにおいて何回か記述していますが、1棟アパートや1棟マンション等の収益用不動産における利回りが著しく低下しています。 

 新築、中古のいずれを問わず酷い下がり方であり、コロナ禍になる前に収益用不動産を購入された方が収益用不動産を買い替えると、ほとんどの場合に利回りが低くなります。このために買い替えを控える動きが生じています。

 原則論から考えると、利回りが良好な物件を購入したい場合は物件を安く購入するしかありません。再建築不可の物件を安く購入し、高利回りの収益用不動産を手に入れることに成功した事例が不動産投資に関するWEBサイト、不動産会社が開催するセミナーなどにおいて数多く取り上げられていることから、再建築不可の物件を探す方が増えています。

 再建築不可とされる土地の多くは建築基準法が認める接道要件を満たさないか、土砂災害警戒区域や市街化調整区域等に指定されたことから再建築不可とされた土地になります。収益用不動産を購入したい方が探すのは、主に前者の「建築基準法が定める接道要件を満たさない土地」です。

 「再建築不可の土地であれば安く購入できる」と考え、安易に購入される方が増えていますが、うっかり手を出したために多額の財産を失った方が数多くいらっしゃいます。購入した方から相談を受けることがありますが、救済策が何も見つからないことが多いので十分な注意が必要です。

 救済策が見つからない典型的な事案は火災による全焼です。借主の失火、または隣家からのもらい火が原因である場合は、いわゆる失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)の規定により、放火などの故意または重過失でなければ損害賠償を請求できません。 

 さらに建物を再建築して収益を得られないにもかかわらず、建物を焼失した後も固定資産税および都市計画税を毎年支払い続ける必要があます。売却したくても買主が現れることはほとんど期待できません。

 建物の焼失が必ず生じるわけではありません。しかし、「再建築不可の土地はなるべく購入しない方が良い」というのが筆者の個人的な考えです。

本題

 問題は、再建築不可の物件ではないと信じて購入したものの、購入後に再建築不可の土地であることが判明するパターンです。買主が当該不動産の購入に強い意欲を抱いていたことに加え、仲介する不動産会社の調査不足等が重なったことからうっかり購入し、建物の老朽化により再建築しようとした際に問題が発覚することがあります。 

 購入後、20年を経過すると損害賠償請求権が除斥期間(じょせききかん)が経過したとして消滅し、民事訴訟を提起できなくなります。「再建築できると信じて購入した土地が再建築不可であった」という悲劇を避けるために、見分けるポイントをいくつか解説します。

道路との接道間口

 建築基準法が接道要件をどのように定めているかについては、詳細を解説するWEBサイトが数多くあります。必要に応じ参照していただければと思います。

 多くのエリアにおいて、道路との接道面が2m以上あれば良いとされています。注意が必要なのは、旗竿地の場合には「竿」の部分における最も狭い箇所の幅も2m以上である必要があることです。

前面は建築基準法が定める道路か

 また、前面道路が建築基準法が定める「道路」であればよいのですが、「道路であると思っていたのに実際は通路であった」という事案があります。 

 「通路」の場合は、再建築不可であることがありますので市町村役場に赴いて調査する必要があります。特に郊外において、このパターンが散見されます。

 ちなみに前面が「通路」であっても、通路の前面に家が数多く建ち並んでいる場合は、特定行政庁(東京都23区内は各区役所)における建築審査会に再建築の許可を求める審査をしてもらうことにより、再建築が認められることがあります。

他人の土地を通らなければ前面道路に出られない土地

 売買の目的である土地(または土地付き建物)と道路との間に他人の土地が存在する物件があります。見分けがつきにくく、うっかり購入してしまいがちなのは幅30cm~1mの細長い他人の土地が前面の全てに横たわっている物件です。この場合、法律上は「再建築不可」の土地になります。

 この細長い土地の所有者から土地を買い取ろうとしても断られることがあります。買い取りを認めてくれる場合でも法外な金額を請求されることがあります。購入しない場合は高額な通行料を請求されることがあります。

 旗竿地の場合には旗竿の部分が他人の土地であることがあります。この場合も同様の問題があります。

公図において、前面道路と土地との間に水路が存在する旨が記載されている土地

 前面道路と土地との間に側溝がある場合、この側溝の幅が狭いのに公図(地図に準ずる図面)において「水路」と記載されていることがあります。「水路」と記載されていると、これは法律上の「河川」と見做され、再建築不可と判定されることがあります。

 問題は、側溝に水が流れることが全くなくなったことから土砂で埋め立てられ、しかも道路の一部として舗装されたことから外見上は側溝が全く存在しないように見える場合です。 

 この場合でも公図(地図に準ずる図面)に「水路」が記載されていると、法律上は「河川が存在する」として再建築不可とされることがあります。

 なお、現況として水路が完全に消滅しており、水が全く流れていない状況である場合は特定行政庁における建築審査会に再建築の許可を求める審査をしてもらう価値があります。ただし審査には長期間を要することがあり、審査の結果、再建築が許可されない場合があるので、このような土地には手を出さないことが賢明です。