収益用不動産、賃貸物件の「鍵」について

収益用不動産を購入して賃貸住宅経営を始められた方が迷われることが多いのは、賃借人の部屋における鍵の取り扱いです。

1.賃貸物件のオーナーが、賃貸中の部屋の鍵を預かることの是非
賃貸借契約を締結した入居者は、入居日に鍵の引渡しを受けるのですが、その際に「鍵の1本は大家さんが保管しますので御了承願います」と言われることが大半です。

ところが、入居者より「大家さんが鍵を預かる理由はないと思うので、部屋の鍵は全部私が預かりたい」と言われることがあります。

確かに自分以外の人が合鍵を持っていることは不安であり、部屋に誰かが侵入することを警戒したい気持ちは理解できます。しかし、ほとんどのオーナーは鍵を預かります。その理由は以下の通りです。

火災や水漏れがあった際に、直ちに対応するため
火災警報器の音、または近隣の部屋における居住者からの異常発生の通報があった際に、部屋に直ちに入れるようにするために鍵を預かりたいとするものです。よくあるのは部屋から煙が出ているとか、玄関ドアの下から水が漏れているといった内容です。

多いのは洗濯機などに繋がっている水道管が蛇口から外れたことによる水漏れです。酷い場合は水が他室に流れ出し、下の階の部屋の天井にしたたり落ち、雨漏りを発生させることがあります。

長期間の行方不明、または室内で倒れている恐れがある等の場合に対応するため
状況により、室内の状況を確認する必要があります。

管理会社の担当者が同伴し、場合により警察官が立ち会った上で室内に立ち入ることになりますが、その際には合鍵が必要です。

オーナーに鍵を預けるべきか
様々な考え方がありますが、私は火災や不慮の事故が発生した場合のことを考え、オーナーは鍵を預かる権利があると考えます。

合鍵を持っているとしても、オーナーは賃借人の許可が無ければ部屋に立ち入れません。正当な理由がないのに部屋の鍵を開けて立ち入った場合は住居侵入罪に問われますし、賃借人から損害賠償を請求されることになります。

このことは、賃貸住宅経営を初めて行うオーナーに対し、不動産会社が詳しく説明しますので、オーナーがむやみに立ち入ることはほとんど無いと考えて構いません。

2.賃借人は、鍵シリンダーを自分で交換することが許されるか
オーナーが合鍵を持っていることが心配であるとして、オーナーや管理会社に無断で鍵シリンダーを交換する賃借人がいます。

しかし、部屋の鍵シリンダーが交換されていると、室内から煙が出ている等の場合に部屋に立ち入れません。オーナーまたは管理会社の担当者が室内に入れず、このために損害が大きくなった場合には多額の損害賠償を請求される恐れがあります。

それにオーナーや管理会社に断ること無く鍵シリンダーを交換する行為は、オーナーとの信頼関係を著しく悪化させる原因になります。無断交換は行わないことをお勧めします。