賃貸物件で民泊を行う場合、違法ではなくてもこれはダメです

2021年3月24日

関西テレビのHPに掲載された記事の引用です。
(リンク先は掲載社の都合で切れることがあります。予め御了承願います。)
※3月24日追記:リンクが切れていることを確認しましたので、リンクを外しました。

「民泊で遺体を安置している」と苦情 布に覆うなどして”月に2~3体”近隣住民とトラブル

3月12日 22:00
大阪市住吉区の民泊施設で遺体を安置しているとして住民とトラブルになっていることがわかりました。
今年1月住吉区の民泊施設の近隣住民から「民泊で遺体を安置している」と区に苦情が入りました。
区が経営者に確認すると、「月に2~3体運び込んでいる」と遺体を一時的に保管していたことを認めました。
遺体は棺桶に入れられたり、布に覆われたりした状態で運びこまれていたということです。
                 ~中略~
また「新型コロナの影響で民泊の客が少なく、倉庫として利用していた」と話しています。
これについて大阪市は「遺体の安置に関する法律や条例はなく指導することはできない」としています。
関西テレビWEBサイトからの引用記事

この民泊運営者は新型コロナウイルス感染症のために自分が運営する民泊(一軒家)の宿泊客が激減していることから民泊物件を倉庫として活用することを考え、葬儀業者から保管料を受け取り、遺体の保管をしていたものと思われます。

開業すれば直ぐに儲けられる新事業であるとして民泊の運営がもてはやされた時期がありましたが、地方自治体が定める条例が年間の開業日数を制限した等の理由により、当初想定していた利益を稼げなくなっているところが大半です。

さらに新型コロナウイルスのために観光目的で来日する外国人の入国は厳しく制限されています。いわゆるインバウンド需要が消滅したことから、民泊の運営を諦める企業が増えています。

賃貸物件でこのような行為を行うと、巨額の損害賠償を請求される
民泊として運営されている物件の大半は、本来は借主が自宅として使用することを目的として貸し出される賃貸物件を利用しています。賃貸借契約書に民泊としての利用が禁止されておらず、住宅宿泊事業法などの法令が定める許認可手続きを経た上で、法令を遵守して民泊を運営するのであれば何の問題もありません。

また、民泊物件を利用して遺体の保管を行ったとしても、地方自治体が定める条例等の法的根拠がなければ、地方自治体は遺体の保管を止めるように指示することはできません。

しかし、民泊の運営者は、貸主から民事上の責任を追及され、多額の損害賠償を請求されます。

おそらく、貸主は賃貸借契約書に定めた利用目的違反を理由として賃貸借契約を解約し、退去させると思われます。退去後の物件は自殺などが発生した「事故物件」と同じように「心理的瑕疵」がある物件として扱われます。遺体を保管している物件は、葬祭場の機能を担っていると評価されるからです。

どのくらいの損害賠償を請求されるか
このため、借主は損害賠償責任を負うことになります。賃貸物件において、心理的瑕疵が発生した場合における逸失利益の算出についてはいくつかの判例があります。

・逸失利益は、1年間は誰も入居せず、その後に入居する方は契約期間の2年について半額で入居すると仮定して算出するべきとした判例(東京地判平19年8月10日)
・2年分の賃料差額が逸失利益であるとした判例(東京地判平13年11月29日)

東京地判平19年8月10日によると月賃料20万円で貸し出される一軒家であれば、480万円を請求されることになります。わずかばかりの保管料を得る代償は巨額であり、全く割に合いません。

投資した金額がもったいないと考えたのか...
コロナ禍である現在の状況では、民泊用に借りている賃貸物件がある場合には貸主にお返しし、「損失」として計上する方が、傷が浅くて済むことが多いです。私が懇意にしている不動産会社の中にも民泊の運営を始めたところが複数ありますが、コロナ禍に突入したことから、ほとんどが民泊の運営から撤退しています。

おそらく、この民泊運営者は投資した金額がもったいないと思い、何とかして手元にある民泊物件を転用できないかと考えたのでしょう。結果として莫大な損失を被ることになりました。違法ではありませんが、地元の住民による顰蹙を買ったこともあり、ビジネスとしては明らかに「ダメ」です。