賃貸物件のオーナー殺人事件に不動産会社の仲介営業担当が関与?

2023年11月20日

NHK 北海道 News Webからの引用です。

※令和3年6月17日追記:リンク先の元記事が削除されましたので、リンクを外しました。

※令和5年11月20日追記:引用記事に実名が記載されているので、この部分を修正しました。

札幌北区の殺人事件 元不動産会社社員 殺害への関与を否認
06月04日 12時05分
おととし、札幌市北区で会社経営者が殺害された事件の裁判で、被告の男は殺害への関与を否認し無罪を主張しました。
 札幌市豊平区の無職、A被告(37)はおととし、不動産会社の社員だった当時、賃貸の仲介を担当していた札幌市北区の会社経営、Bさん(当76)の首を絞めて殺害したほか、顧客から預かった賃貸料などを着服したとして殺人と業務上横領の罪に問われています。
 札幌地方裁判所で3日に開かれた初公判で村井被告は横領した事実を認めていましたが、4日行われた殺人の罪についての審理では、「すべて違います」などと述べて殺害への関与を否認し、無罪を主張しました。
 検察は冒頭陳述で「被告は業務で預かった資金を横領していたため、被害者への敷金の入金ができず、事件当日も支払いを急ぐよう問い詰められていた。横領が発覚しないよう被害者を殺害する動機があった」と指摘しました。
これに対し、弁護側は「被告が現場を立ち去った後に何者かが被害者を殺害した」と主張しました。

NHK 北海道 News Web

犯人は不動産会社の賃貸仲介営業担当であったとのことです。客(賃借人)から預かった家賃や敷金を着服し、借金の返済に充てたようです。さらに横領行為の発覚を防ぐためにオーナーを殺害した疑いがあるとのことです。

犯人を責めるのは簡単です。しかし、不動産会社の経営者がしっかりしていれば、横領行為の発生については未然に防げた可能性が高いと思います。

不動産会社が犯した二つのミス
経営者が信用できる従業員であると思っていても「魔が差す」ことがあり、思わぬ事件に発展することがあります。多額の金銭が横領されると、会社の存続が危ぶまれる危機的な事態になりかねません。

1.現金の受け渡し方法に問題があった
金銭の出納業務に関わる従業員による横領事件は数多く発生しています。

1名の営業担当に、多額の現金を店舗外で受領させることは極力避け、可能であれば店舗内で受領するように指示するべきです。難しい場合は、銀行振込による送金をお願いすれば事件の発生を未然に防げます。

不動産会社の店舗内で現金を受け取る場合は、経営者または経理担当がその場に同席して受領するべきです。経営者や経理担当が不在の場合は、現金の受領を複数人で対応します。それができない場合は事前に銀行振込による送金をしてもらいます。これらの方法により、横領行為を未然に防げます。

2.従業員の営業活動を、会社の経営者が把握していない
以下は経営者または経理担当が全て把握していなければならない事項です。

・何月何日に営業担当の誰がどのお客様と打ち合わせ、契約または決済をどこで行うか。
・打ち合わせ、契約または決済の際に営業担当が受領する金銭があるか。ある場合はその金額。

どうしても単独の営業担当者に社外で金銭を受け取らせなければならない事情があり、受領を任せたものの不動産会社に対する入金がない場合は、経営者又は経理担当から営業担当者に対し、理由を直ちに訊かなければなりません。

理由の説明が曖昧である場合、または普段と異なる気配が感じられる場合は、経営者または経理担当から金銭の支払をされたお客様に連絡し、金銭を営業担当に渡したかを確認します。その際にはストレートに訊くことはできませんので、どのようにお尋ねするかを考える必要があります。

経営者および経理担当が目を光らせていれば、従業員は「この会社では横領はできない」と考えます。万が一、隙があれば横領して逃亡することを考える従業員がいたとしても、自然に自ら退職します。

このように書くと従業員を信用しない、疑い深い経営者であると思われるかもしれませんが、お客様と会社を護るためには仕方ありません。従業員による横領行為が原因で倒産した会社は数多くあります。倒産した際に、迷惑を被るのはお客様です。

不動産会社が負わなければならない責任
民法が定める使用者責任(民法第715条第1項)の問題が生じます。従業員を雇用する会社は、その従業員が不法行為を行った場合に損害賠償を請求されます。

裁判では、この横領犯人が殺人犯であるとは断定されておらず、現時点では推定無罪の原則に従うことになります。

しかし、仮に殺人に対する有罪判決が確定した場合には、業務の執行に関係する殺人が行われたとして、不動産会社が多額の慰謝料および損害賠償を請求される恐れがあります。

不動産会社と従業員とは不真正連帯債務を負うことになります。犯人に賠償能力があることは極めて稀ですから、不動産会社が一方的に慰謝料および損害賠償を請求され、支払義務を負うことになる可能性が高いです。最悪の場合は、不動産会社が倒産することになります。