火災が発生した物件を売買する際は、ボヤでも「告知対象」

戸建住宅の台所で火災が発生し、消防署に通報したことから消防車が出動したものの、いわゆるボヤであり、到着前に火災を消火器で鎮火できたとします。その後、窓や天井、床などを修繕して居住し続け、何年か後に中古住宅として売却したとします。この場合、この中古住宅の買主に火災が発生したことを告知する必要があるかという問題です。

結論から申し上げると、ボヤであっても建物の耐久性に重大な支障が発生している可能性を否定できず、仮に修繕をした場合でも「火災発生の事実を知っていたら購入しなかった」と考える買主が多いことから、売買の際には告知義務があります。

「火災の痕跡が残っていなければ告知義務はない」と思われるかもしれませんが、柱や梁に目に見えない損傷を与えていることがあり、耐震性や耐久性に問題が生じていることがあります。

素人判断で告知しないで引き渡すと、後で火災が発生した事実があることを近隣住民から教えられたり、住宅のリフォームを行う際に火災による柱や梁の損傷が見つかり、大きなトラブルに発展することがあります。

買主は「過去に火災が発生した物件であることを知っていれば購入しなかった」として、売主に多額の損害賠償を請求する可能性があります。

工務店に修繕を依頼し、耐久性及び耐震性には全く問題がない状態である場合でも、その事実を告知せずに売却すると、買主は不快になり、損害賠償を請求される可能性が極めて高いです。

火災が発生した事実を詳細に説明し、建物の耐久性および耐震性が十分に保たれるレベルの修繕工事を済ませている場合は修繕の内容を説明する必要があります。

「それでは売却価格が安くなる」と思われるかもしれませんが、売却後に裁判沙汰になり、多額の裁判費用及び損害賠償を請求されることを考えれば、告知するのが得策です。

このような住宅を売却する際は、仲介を依頼する不動産会社に対し、火災が発生した事実、および修繕した場合は修繕工事の内容を知らせておく必要があります。

ちなみに、火災が発生した事実について、仲介する不動産会社には積極的に調査する義務がありません。というか、調査する方法がありません。火災が発生した記録を不動産会社が閲覧する方法が提供されていないのです。

このため、売主は不動産会社には事実をありのままに伝え、買主に告知する必要があります。