収益物件として事故物件を購入することは得、それとも損?

 1棟もののアパート・マンション、賃貸用戸建住宅、賃貸用区分マンションに対する需要が急増しており、特に交通が至便な一部のエリアでは価格がコロナ禍に陥る前の2~3倍に達しています。

 表面利回り4%前後などの、2年ほど前には考えられなかった利回りの物件が多く販売されており、利回りがかなり低い物件でも引き合いがあり、売れているようです。

 ところが、表面利回り4%の物件における実質利回りは2~2.5%にしかなりません。これでは投入資金を回収するだけでも数十年近くを要することになります。

 なるべく利回りが高い物件を購入したいということで、収益用不動産としていわゆる事故物件を探す方がいらっしゃいます。事故物件の中には表面利回り8%以上の物件が多くあり、利回りだけに注目すれば、かなりお買い得であるように思えます。このため、「事故物件でも構わない」として多くの方が購入しています。

 事故物件は、確かに安価に購入できるのですが、相応のリスクがあります。賃借人募集の際、または物件売却の際に告知義務があることはよく知られていますが、それ以外のリスクについてはあまり知らない方が多いので、本日の投稿ではこれらについて書きます。

事故物件の定義
 国土交通省が定めた「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」に規定されています。このブログにおける過去記事(リンク1リンク2)においても取り上げています。

 要約すると、いわゆる自然死(老衰など)、日常生活における不慮の死(誤嚥、転倒、階段からの転落)が発生したとしても、その物件は事故物件とは見做しません。ただし、亡くなられたことの発見が遅れたために特殊清掃が行われた物件は、事故物件になります。

事故物件を収益用不動産として購入することのリスク
1.賃貸物件の入居者を募集する際、または物件を売却する際に告知義務が生じる
 事故物件になった原因が自殺、殺人などの異様な態様で人が死亡したことにある場合、賃貸募集の際は事案の発生(又は発見)時から概ね3年間は告知義務が生じます。また、物件の売却においては無期限に告知義務が生じます。

 告知せずに入居者を募集して入居させた、または購入希望者に売却した場合、賃借人または買主より損害賠償責任を追及されることにつながります。

2.賃料を安くしないと借り手が見つからない
 事故物件であることを告知して新たな入居者を募集する場合、賃料は近隣の家賃相場の2割~3割程度安く設定する必要があります。ただし、都内の交通至便なエリアでは1割程度の値下げで済むことがあります。

3.入居者募集の期間が長期化しやすい
 入居者が春先に退去した場合、通常は次の入居者を3月末迄に決めることになります。しかし、事故物件の場合は3月末迄に新たな入居者が決まらないことがよくあります。

 新たな入居者を3月末迄に決められない場合、数ヶ月以上の空室期間が生じることがよくあります。

4.怪奇現象が発生すると入居者が一斉に退去し、管理会社が撤退する
 1棟マンションにおいて怪奇現象が頻発し、全ての入居者が一斉に退去した事案があります。このマンションの管理会社は「自社では手に負えない」として管理契約を解約し、管理業務から撤退しました。

※実際に発生し、対応を相談された事案です。守秘義務があるので、詳細に関する問合せには一切応じません。

5.入居者が短期間に退去する
 事故物件である旨の告知を受け、了解の上で2年間の契約期間(普通賃貸借契約)で入居した方でも「怪奇現象が発生する」ことを理由として3か月~1年程度で退去してしまう物件があります。お祓いなどを行っても効果が無いことがよくあるようです。

6.売却時の査定が低くなる
 国土交通省が定めた「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によると、事故物件を売却する際は、事故物件であることを無期限(ほぼ半永久的)に告知する必要があるとされています。

 都心にある物件の場合で1割、その他の物件では2~3割安くなります。

7.売却が非常に困難な物件がある
 先に書いた、怪奇現象が頻発したことから全ての入居者が一斉に退去した履歴がある1棟マンションは、価格をかなり安くしても、また、どのような方法を用いても売却は非常に困難です。

結論
 高利回りであるからといって、不動産業界に携わらない一般の方がわざわざ事故物件である収益物件を購入することはお勧めしません。

 既に複数の収益用物件をお持ちであれば、このような物件にチャレンジしても構わないかと思います。ただし、何が起きても自己責任になります。