設備を更新し続けないと入居者が決まらない(その3、防犯設備)

賃貸アパートおよび賃貸マンションでは、総じて1階のお部屋に対する人気がありません。最大の理由は、防犯上の懸念があると考える方が多いことにあります。さらに、外部から覗かれる恐れがあるということで、特に女性の方が敬遠する傾向があります。

1階に限らず、入居を検討されている方が気にするのは防犯設備の設置状況です。これがおろそかにされていると、入居先の候補から外れてしまいます。

防犯対策
1.雨戸から合わせガラス&防犯シャッターへ
防犯対策として、従来は雨戸を閉めておくことが有効であるとされていました。

しかし、手先が器用な方であれば外部から外せる仕様の雨戸がありますし、長期不在の際に雨戸を日中も閉めたままにしておくと、長期間留守にしていることを外部に示すことになります。

このため、仕事などで日中に外出する場合は雨戸を開けることが必要になります。しかし、これではガラス扉を叩き割ることにより侵入する賊を防ぐことは出来ません。日中の防犯をどうするかということは長年の課題でした。

そこで、バルコニーの扉に使用するガラスを合わせガラスにすることで防犯性能を上げることが推奨されました。合わせガラスとは、プラスチック(ポリビニルブチラールなど)の透明な膜を二枚の板ガラスで挟む構造のガラスです。

合わせガラスに対して外部から衝撃を加えた場合、ガラス層にひびが入り、粉砕します。しかし、挟み込んでいるプラスチックの膜は破れません。このため、侵入者がハンマー等で叩き割ろうとしても、簡単に破れることはありません。

自動車のフロントガラスには合わせガラスを使用する事が義務づけられています。事故が発生し、乗員が前方に飛び出した場合でも、フロントガラスを突き破って車外に放り出されることを防ぎます。

この合わせガラスにはガスバーナーなどの火力に弱いという欠点があります。ガラスを叩き、ガラス層を粉砕した後に現れるプラスチックの膜をバーナーで焼くと破れてしまいます。

しかし、人が侵入できる大きさの穴を開けるためにプラスチック膜をバーナーで焼くとしても、相応の時間がかかります。窃盗犯は短時間で現場を立ち去ることを考えています。プラスチックの膜を破れないことから侵入を諦めることが期待できます。合わせガラスには一定の防犯効果があります。

現時点において、防犯設備として最も有効なのは、タイマーで開閉する防犯シャッターと合わせガラスとを組み合わせることです。バルコニーのガラス扉を合わせガラスにし、その外側にタイマー付きの自動開閉式シャッターを設置します。

タイマーをセットし、一定の時刻になるとシャッターが開閉するようにセットしておくことにより、留守にしている場合でも外部に知られることがありません。

このような対策をアピールすることにより、入居希望者を1階部分に誘導することが可能になります。

2.防犯カメラの設置
共有部に防犯カメラを設置することは、入居者に対し安心感を与えます。廊下の天井から各部屋の玄関を撮影するようにしておけば、不審者が玄関から侵入した際に、犯行の状況が撮影されます。

防犯カメラを設置するとプライバシーの問題が生じるとして問題視する方がいますが、共用部に防犯カメラが設置されていることにより、撮影されることを恐れる窃盗犯は侵入を諦めるという事実があります。このあたりは利益衡量の問題であると思います。

それに万が一、何らかの事件が発生した場合に、撮影データがあれば事実の解明に役立ちます。

防犯カメラの設置は防犯対策がしっかり行われている賃貸物件であることを印象づけることができるので、入居促進に繋がります。

3.ディンプルキーと二重鍵
ディンプルキーは高価ですが、ピッキングによる侵入を防ぐ効果が高いです。二重鍵の玄関扉は、窃盗犯が侵入するのに時間を要することから、侵入を諦めてくれることが期待できます。

4.オートロック
オートロックが設置されていない物件に対し、オートロックを新たに設置することは、建物の構造上の問題のために困難なことがあります。

しかし、オートロックが設置されていると、防犯対策がしっかりしている賃貸物件であることを印象づけることができるため、入居を促進する効果は絶大です。設置にはやや多額の費用がかかりますが、入居者がなかなか決まらないようであれば設置を検討する余地があります。