賃貸物件の空室率が上昇し、危険な状況(東京都区部)

 東京では新築のアパートやマンションが多数建築されています。特に「老後に備え、2000万円を貯蓄する必要がある」という見解が世間に流布されてから、この動きが顕著です。

 広い戸建住宅の持ち主が住宅を取り壊し、賃貸併用住宅を建築することが増えています。私の会社がある目黒区では、住宅街を2~3分歩くと必ずと言って良いほどにアパートまたは賃貸用マンションの建築現場を目にします。

 賃貸住宅経営を考える上で重要なのは空室をなくすことです。しかし、短期間にあまりにも多くの賃貸アパートおよびマンションが建築されたことから空室がなかなか埋まりません。特に単身者用の部屋(ワンルーム、1K)については空室のままで半年以上放置されている物件が数多くあります。

私の会社がある東京都目黒区における状況
 目黒区における空室率は、概ね3割に近いのではないかと考えています。「そんなに多いはずはない」と思われる方が多いかもしれませんが、不動産取引に携わる者の実感として、この割合になります。

 空室が多いだけではなく、家賃を滞納している方がいらっしゃいます。10部屋の収益不動産の場合、1~2部屋は滞納している感があります。1部屋が滞納している場合、物件の稼働率は約60%にしかならないという計算になります。

 東京都区内で現在販売中の収益用不動産における表面値回りは、多くが4~5%です。実質利回りは2~3%程度です。なお、この実質利回りは満室である場合を想定した利回りであり、空室率および滞納率が上がると実質利回りは低下します。

 ちなみに、東京都における他の区における空室率は15~20%程度のところが多い感があります。

空室率が上がり、さらに家賃を滞納する方が増えるとどうなるか
 実質利回りが3%の物件で、空室率が30%、滞納率が10%になると実質利回りは1.8%にしかなりません。事業用ローンを利用して購入した物件の場合、これでは利益の大半がローン返済に回ることになり、オーナー様が得られる利益はほとんどありません。

 多くの場合においていわゆる逆ざやになり、実質利回りはマイナスになる恐れがあります。空室がある場合でも事業用ローンの返済は猶予してくれません。手持ちの資金の中から返済をし続けなければなりませんが、手持ちの資金がなくなった際に賃貸経営が破綻します。これでは何のために収益用不動産を購入したのかわかりません。

 現在、多くの賃貸アパート、マンションが新築されていますが、「賃貸経営」の視点で考えた場合、東京都区内の物件は危険領域に入りつつあります。入居先を探している方に対し、訴求できる要素が少ないといつまで経っても空室が埋まらない事態になります。 

 収益用不動産を購入する際には物件所在地における空室率、世帯収入額等についても予め調べることを強くお勧めします。