分譲マンションとペット飼育

分譲マンションにおけるペット飼育に関する制限
大半の分譲マンションではペットの飼育を禁止するか、飼育できるペットの種類や飼育頭数に関する何らかの制限を設けています。飼育可のマンションでは管理規約またはペット飼育細則に、飼育できる動物の種類、頭数、体格等を細かく規定しているところが多くあります。また、ペット飼育開始時における手続きを厳格に定めているマンションがあります。

以前に私が売買の取引に関わったマンションの中にはかなり厳しい手続きを定めているところがありました。このマンションでは管理会社または管理組合にペットの種類、名前、年齢、体長、体重を申告し、ペットの写真を添えることを義務づけていました。さらに犬の場合は狂犬病の予防接種を受けた証明書類を毎年提出することを定めていました。

このマンションでは、ペットを共用部やエレベーター内を歩かせることを禁止し、部屋から連れ出す際は抱きかかえるか、ケージに入れて運ばなければならないと定めていました。

分譲マンション、特にファミリー向けの物件でペット飼育可としているところでは、ペットを飼育する居住者と飼育しない居住者が同じ建物内で生活しています。ペットを飼育していない居住者の中にはペットの鳴き声、臭いに敏感な方がいます。うるさく吠える犬がいる、共用部に平気で排泄させる居住者がいる、飼育可能頭数を超える頭数のペットを飼育している等の情報が管理組合や管理会社に通報されることがあります。

管理組合や管理会社には居住者を退去させる権限がない
賃貸物件の場合と異なり、管理組合や管理会社には居住者を退去させる権限がありません。特に、ペット飼育細則などに反したペット飼育をしている居住者が区分所有権者である場合には、退去させることは極めて困難です。

管理組合や管理会社は部屋番号を伏せた上で、居住者が見る掲示板に「飼育可能頭数を超えた頭数を飼育しているお部屋があるとの情報が管理組合に届いています。ペットの飼育についてはペット飼育細則に定める内容を遵守してください。」等の張り紙をするくらいしか方法がありません。

一つの部屋で違反が発生すると、他の部屋でも同様の行為を行う方が現れます。やがて管理組合の理事会などで大きく取り上げられ、管理組合から飼育をやめるか頭数を削減して欲しいと、個別に依頼することになるかもしれません。

しかし、管理組合または管理会社からの依頼を無視された場合でも、制裁する権限は誰にもありません。管理組合の総会等で問題提起し、解決策を考えるしかありません。

強制退去は迫られないが、事故が発生した際の責任は重大
分譲マンションにおける区分所有権者がペット飼育細則に違反するペット飼育を行い、これをやめない場合でも放置するしかないのが現状です。

しかし、事故が発生した場合には責任を厳しく追及されます。ペット飼育細則で飼育が禁止されている大型犬を飼っていたところ、共用部でリードが外れたことから他室の居住者に噛み付き、大怪我をさせた事例があります。このような場合は被害者から治療費及び慰謝料を請求されます。状況により、刑事責任を追及されることがあります。

訴訟の場ではペット飼育細則に反して大型犬を飼育していたことに対する責任は重大であり、大きく非難されるべきと見做されます。民事訴訟では多額の損害賠償および慰謝料を支払うように命じられますし、刑事事件として立件されることがあります。

大型犬やは虫類を飼育したい場合は、生活の拠点をマンションではなく戸建住宅にするべきと考えます。