賃貸物件におけるペット飼育の可否(オーナー様向け)

マンションやアパートを借りたいお客様、およびマンションを購入したいお客様からペット飼育可の物件限定で探して欲しいと依頼されることがあります。

ペット飼育禁止の賃貸物件が多い理由
ご承知の通り、賃貸物件の多くはペットの飼育を禁止しています。犬や猫の飼育を認めると、クロスやフローリングの床等が傷つけられ、さらにペット臭が部屋に染みつくことから原状回復リフォームおよび清掃の費用が増えるからです。酷い場合は排泄物が床下の構造物に達していることがあります。こうなると原状回復費は20万円以上になりますし、場合により数十万円を超えるることがあります。

原状回復費が高額になると、退去時に請求しても「金額に納得できない」として支払を拒む方がたまにいらっしゃいます。トラブルになることがしばしばあり、工事期間中は新たな賃借人を入居させられないことから、ペットの飼育を禁止しているオーナーが多いです。ただし、ペット飼育禁止を定めていても、文鳥などの小鳥や金魚については飼育可の物件が多いです。

ペット飼育可の物件でも、飼育できるペットの種類や頭数、体格に制限を設けている
「小型犬または猫を2頭まで飼育可」としているところが多いです。最近、東京都区内では「猫のみ2頭まで飼育可」の物件が増えています。犬の場合、近隣の部屋から「鳴き声がうるさい」というクレームが発生した際の対応が困難なことから、トラブルを回避するために飼育を認めないところが増えています。

小型犬又は猫のみ飼育可の物件でも、ハムスターおよびウサギは相談された際に飼育を認めて構わないと考えます。これらの動物は鳴き声を発しませんし、他室の賃借人に迷惑をかける恐れが少ないからです。

小型犬および猫の飼育は認めるものの、は虫類、金魚を除く魚類、大形の鳥、昆虫の飼育は不可にしているところが多いです。は虫類や昆虫の中には猛毒を持つものがありますし、万が一逃げ出した場合に他室の居住者が咬まれたり刺される等、危害が加えられる恐れがあるからです。

分譲マンションの一室を賃貸物件として貸し出している場合は、飼育できる動物などの種類を管理組合が定めていることが多いです。

ペット飼育可の物件における敷金および賃料
ペット飼育可として賃借人を募集する際には、敷金を高めに設定することをオーナー様にお勧めしています。都区内の場合、ペット飼育不可の物件では敷金ゼロ、または賃料1か月分に定めるところが多いのですが、ペットの飼育を認める物件では賃料2~3か月相当額を敷金として預かることをお勧めします。

関西には「敷引」の慣習がありますが、関東圏、特に東京都内における住宅賃貸では「敷引き」の慣習はありません。いわゆる「東京ルール」が適用され、住宅の賃借人が退去する際には原則として敷金の全額を返金しなければなりません。このため、関東圏では家賃を地域の賃料相場より5~10%程度高めに設定しても構わないと思います。

ペット飼育不可の物件をペット飼育可にすることの是非
コロナ禍であることから、特に若者向けのワンルームや1Kの部屋では空室が増えています。打開したいことからペット飼育可に変更することをお考えのオーナー様がいらっしゃると思います。

しかし、ペット飼育不可の物件を飼育可に変更することは、あまりお勧めできません。従来から居住していた方とのトラブルに発展し、退去する原因になるからです。単に退去するだけではなく、引っ越し代や転居先の物件における入居費用を請求されることがあります。

ペットを飼育していない方は、鳴き声や排泄物の臭いに敏感なことがあります。猫アレルギーの方が、あえてペット飼育不可の物件を探して入居していることがあります。特にこのような方が居住している場合、引っ越し代と慰謝料の支払いを求める裁判を提起されることがあります。裁判になると、オーナー側が敗訴する可能性が高いです。

ペット飼育不可の物件をペット飼育可にするのは、全室が空室の状況でないと難しいと思います。

ペット飼育禁止の物件で、賃借人がペットを飼育し始めた場合
賃貸借契約書の特約としてペット飼育禁止が規定されている物件でペットを飼育した、またはペット飼育可の物件であるものの飼育可能頭数を超えた数のペットを飼育している、は虫類の飼育を禁止しているマンションで蛇等を飼育している賃借人がいる等が判明した場合、オーナーはどのような対応をするべきでしょうか。

ペット飼育禁止、または飼育頭数・種類の制限に反して飼育している賃借人の存在が他室の賃借人に認識されると、認識した他室の賃借人もペットを飼育し始めることがあります。オーナーまたは管理会社がペットを飼育している賃借人を放置すると、他室の賃借人が一斉にペットを飼育し始めることがあります。このため、オーナーはペットを飼育する賃借人に対し、毅然とした対応をするべきです。

ペットの飼育を禁止している賃貸物件でペットを飼育する行為、または頭数制限を超える頭数を飼育する行為は、借地借家法が定める「賃貸人および賃借人相互の間における信頼関係を破壊する行為」に該当します。

オーナーや管理会社は「捨ててきてください」とか「処分してください」とは言えません。「里親を探してください」とか「親戚か知人、友人に預けてください」とお願いすることになります。飼育をやめてくれない場合はオーナー側から賃貸借契約を解約し、退去させる必要があります。

ペットを飼育している賃借人から「敷金や家賃を増額して構わないので飼育を認めて欲しい」と頼まれることがありますが、他室の賃借人に対する影響が大きいので、毅然とした態度で臨むことをお勧めします。